更年期に起こる12の症状を4つのタイプから原因と対処法を婦人科医が詳しく解説

2022. 11. 28
監修:松村 圭子 プロフィールを見る >

日本産科婦人科学会専門医
成城松村クリニック院長
若い世代の月経トラブルから更年期障害まで、女性のカラダをトータルサポートしている。

(https://www.seijo-keikoclub.com/)

「更年期の症状ってどんなもの?みんな同じ症状なのかな?」
「いま抱えてる不調は更年期だから?なぜ更年期になるとこんな症状が出るの?」

   
こんな悩みをお持ちではないでしょうか。

更年期を迎えた女性の多くが心身の変化や不調を自覚するといわれていますが、現れる症状は多様で程度にも個人差があります

この記事では、更年期の主な12の症状を、「血管運動神経系」「精神神経系」「消化器系」「運動器官系」の4タイプに分けて解説します。

【更年期に起きる12の症状】
血管運動神経系の3つの症状 精神神経系の4つの症状
ホットフラッシュ
動悸・息切れ
むくみ
頭痛
めまい
イライラ感
不安感
消化器系の2つの症状 運動器官系の3つの症状
排便障害(下痢・便秘)
吐き気
肩こり
疲労感
しびれ

更年期の症状のほとんどは、女性ホルモン(エストロゲン)の減少による自律神経の乱れによって引き起こされます。
また、更年期の年代(一般的には45才〜55才)は、仕事や家庭で変化が起きやすく、ストレスが重なって、心身に悪影響を及ぼすこともあります。

記事では、症状ごとに原因と対処法を述べますので、気になる症状を選んでみて頂けたらと思います。

この記事をおすすめしたいのはこんな人です
  • 更年期にはどんな症状が出るのか知りたい人
  • 更年期の症状の原因を把握したい人
  • 自分の症状が更年期によるものなのかを判断したい人
  • 更年期の個別の症状の対処法が知りたい人

年齢と共に変化する体を理解して上手に付き合っていくことで、更年期も元気に過ごせます。
正しい知識をしっかり身につけていきましょう。

更年期の12の症状を一覧で紹介|この悩みも実は更年期の症状だった!

まずは、更年期によくある12の症状を示した一覧表からご紹介していきましょう。

1-1.【タイプ別】更年期の12の症状一覧

更年期によくある症状を、「血管運動神経系」「精神神経系」「消化器系」「運動器官系」の4つに分けて一覧表でご紹介します。

更年期障害の特徴は、現れる症状が多様で、程度にも個人差があることです。
また、ひとつの症状ではなく、2つ以上の症状が複合的に現れるケースも多くあります。

あなたのお悩みに該当する症状はいくつあるでしょうか。
見ていってください。

血管運動神経系の3つの症状
ホットフラッシュ
  • 上半身ののぼせ
  • ほてり
  • 汗が止まらない
  • 急に顔が熱くなる
動悸・息切れ
  • 心臓の拍動を強く、早く感じる
  • 胸がドキドキする
  • 呼吸が浅くなる
  • 息が詰まる
  • 上手く息が吐けない
  • 息苦しい
むくみ
  • 寝起きに顔が腫れる
  • 足がむくんで靴が履けない
  • 指がむくんで
    指輪が入らなくなった
精神神経系の4つの症状
頭痛 <緊張型頭痛>

  • 頭全体が
    締めつけられるように痛む
  • 頭の両側や全体が痛む

 

<片頭痛>

  • 頭の片側が痛む
  • 片側だけズキズキと
    脈打つような痛みがある
  • 吐き気を伴うことがある
  • 太陽の光や音で痛みがひどくなる
めまい
  • 体がふらふらする
  • 床がぐらぐらしているようで
    真っ直ぐ歩けない
  • 天井がぐるぐる回って
    いるような感じがする
  • 目の前が暗くなる、気が遠くなる
イライラ感
  • 何もないのに不機嫌
  • すぐカッとなって
    感情のコントロールができない
  • 些細なことが気になって
    イライラする
不安感
  • 理由もなく暗い気持ちになる
  • 心がざわついて落ち着かない
  • 孤独を感じる
  • 落ち込みが激しい
  • 疲れて気力がない
  • このままで良いのかと
    将来や人生について不安を感じる
消化器系の2つの症状
排便障害
(下痢・便秘)
  • 腹痛を伴った下痢
  • コロコロの硬い便が出る
  • 排便してもスッキリ感がない
  • 下痢と便秘を繰り返す
吐き気
  • 急に気持ち悪く
    胃がムカムカしてくる
  • つわりのような吐き気がする
運動器官系の3つの症状
肩こり
  • 首から背中にかけて
    こわばりや怠さを感じる
  • 肩に圧迫感を感じ
    頭痛や吐き気がする
疲労感
  • すぐ疲れる
  • 寝ても疲れがとれない
  • 朝起きたときからだるい
  • 体が重い
  • やる気が起きない
しびれ
  • 手足がしびれる
  • 手足の感覚が鈍くなる
  • 皮膚の表面がピリピリする

いかがでしょう。
こうした様々な症状がどうして現れてしまうのか?…次項では、更年期の症状が起こるメカニズムを解説します。

1-2.更年期の症状が起こる仕組み

更年期障害とは
女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少によって起きる自律神経の調節不良や心身の不調が日常生活に支障をきたしてしまう状態のこと

一般に、更年期とは、女性の閉経をはさんだ45才〜55才くらいの約10年間を指します。
※但し、閉経年齢には個人差があり、40代前半から更年期がはじまる人もいます

更年期の症状は、閉経前後に卵巣の働きが衰え、女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌が急激に減少することで起こります。

「エストロゲン」は女性らしさをつくるホルモンで、生殖器官を発育、維持させる働きを持ちます。
肌や髪の潤いを守ったり、女性らしい丸みのある体形をつくったり、女性の体全体の健康を支える作用も果たします。
脳や自律神経にも働きかけるため、女性の心身に大きく影響するのが特徴です。

更年期に、エストロゲンの分泌量が減少すると、今までエストロゲンによって調節されていた様々な機能がうまく働かなくなります。

脳の視床下部は卵巣が指令通りにエストロゲンを分泌しないことで、混乱してパニックに陥ります。
視床下部には、体温の調整をはじめ、生理現象の中枢を司る自律神経を調整する働きがあり、視床下部がパニックを起こすと自律神経のバランスも崩れて調節がうまくいかなくなります。

この、エストロゲンの急激な減少によって起きる、自律神経の調節不良や心身の不調が日常生活に支障をきたしてしまう状態が更年期障害です

あなたがお悩みの症状は、更年期障害による症状かもしれません。

次章から、一覧で示した12の症状について、「原因」と「簡単にできる対処法」を解説しますので、自分の症状と照らし合わせながらみていってください。

更年期の血管運動神経系の3つの症状|原因と対処法

更年期における「血管運動神経系」の3つの症状の原因と対処法を解説します。

順に見ていきましょう。

2-1.ホットフラッシュ

ホットフラッシュは血管運動神経症状の1つで、更年期の代表的な症状です。

具体的には、

  • 上半身ののぼせ
  • ほてり
  • 汗が止まらない
  • 急に顔が熱くなる

といった症状が起こります。

昼間だけではなく夜間も同じように起こるため、就寝中に起こった場合、何度も目覚めてしまい、睡眠障害を引き起こす恐れもあります。

【更年期のホットフラッシュ|原因】
「ホットフラッシュ」は、女性ホルモン(エストロゲン)の減少によって、血管の収縮や拡張をコントロールしている自律神経が乱れて体温調整ができなくなることによって起こります。

閉経前後になって、脳からの指令通りのエストロゲンが分泌できなくなると、脳の視床下部は混乱を起こします。

視床下部には、体温の調整をはじめ、血管の収縮・拡張 血圧 心拍 発汗などのコントロールを司る自律神経を調整する働きがあるので、視床下部がパニックを起こすと自律神経も一緒に乱れてしまい、ホットフラッシュの症状が起きるのです。

【更年期のホットフラッシュ|対処法】
自分で簡単にできるホットフラッシュの対処法は次のようなものです。

  • 脱ぎ着のしやすい通気性の良い服を着る
  • 濡らしたタオルやウェットティッシュでほてった部分を冷やす
  • 涼しい部屋で休む
  • 深い深呼吸をする
  • 普段から刺激の強い食べ物を避ける

2-2.動悸・息切れ

更年期の症状で、激しく体を動かしたわけでもないのに動悸や息切れを感じることがあります。

具体的には、

  • 心臓の拍動を強く、早く感じる
  • 胸がドキドキする
  • 呼吸が浅くなる
  • 息が詰まる
  • 上手く息が吐けない
  • 息苦しい

といった症状が起こります。

【更年期の動悸・息切れ|原因】
更年期の動悸や息切れの原因は、女性ホルモン(エストロゲン)の減少による自律神経の乱れです。

更年期になって卵巣の機能が低下(停止)し、脳からの指令通りのエストロゲンが分泌できなくなると、脳の視床下部は混乱してパニックに陥ります。

視床下部には、体温の調整をはじめ、生理現象のコントロールを司る自律神経を調整する働きがあり、視床下部がパニックを起こすと自律神経のバランスも崩れてしまいます。

心拍や呼吸などをコントロールしている自律神経の乱れから、動悸や息切れなどの症状が引き起こされてしまうのです。

【更年期の動悸・息切れ|対処法】
動悸や息切れの症状が出たときにすぐできる対処法は2つあります。

  • 腹式呼吸をする
  • ツボをおす

<腹式呼吸の方法>

  • ゆっくり大きく鼻から息を吸い、お腹に空気を入れる
  • 時間をかけて吸った空気を吐き出す
  • 何度か繰り返しながら肩の力を抜いてリラックスする

<動悸や息切れに効くツボ「神門」>
「神門」は、手のひら側の手首の小指寄りにあって、押さえるとへこむ部分です。

動悸や息切れを感じたとき、「神門」を親指で数秒押してください。
左右交互に2〜3回繰り返します。

2-3.むくみ

更年期になるとむくみが出やすくなります。

具体的には、

  • 寝起きに顔が腫れる
  • 足がむくんで靴が履けない
  • 指がむくんで指輪が入らなくなった

といった症状が起こります。

【更年期のむくみ|原因】
更年期のむくみは、女性ホルモン(エストロゲン)の減少によって、血管の収縮や拡張をコントロールする自律神経が乱れることによって起こります。

また、加齢による筋力低下で、血液の流れが滞るのも原因のひとつです。

血液やリンパの流れが悪くなり、細胞と細胞の間に水分と老廃物が溜まって、むくみの症状が現れます。

【更年期のむくみ|対処法】
むくみの対処法には次のようなものがあります。

  • 冷水温水交互に洗顔する
  • 顔にホットタオルをあてて血行を促す
  • 軽いストレッチや運動をする
  • マッサージする
  • 湯船にゆっくりつかる

また、食品で塩分を排出する働きのあるカリウムの多いものを選んで摂ることも有効です。
カリウムの多い食品には、根菜類、野菜、バナナやりんごなどの果物があります。
お酒の飲み過ぎ、就寝前の水分や塩分の摂取はむくみの元になるので避けるようにしてください。

更年期の精神神経系の4つの症状|原因と対処法

更年期における「精神神経系」の4つの症状の原因と対処法を解説します。

各々みていきましょう。

3-1.頭痛

更年期にみられる頭痛には、主に「緊張型頭痛」と「片頭痛」のふた通りがあり、それぞれ以下のような症状がみられます。

緊張型頭痛

  • 頭全体が締めつけられるように痛む
  • 頭の両側や全体が痛む

片頭痛

  • 頭の片側が痛む
  • 片側だけズキズキと脈打つような痛みがある
  • 吐き気を伴うことがある
  • 太陽の光や音で痛みがひどくなる
【更年期の頭痛|原因】
更年期の頭痛の原因は、女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少による自律神経の乱れです。
自律神経の働きが乱れることで、頭痛の症状が発生します。

「片頭痛」は、抑うつや不安など他の精神症状とも関連することが報告されています。

「緊張型頭痛」は、無理な姿勢を続けたり、目や肩の疲れなどの身体的ストレスだけでなく、心配ごとや不安などの精神的ストレスから、頭部の筋肉が過度に緊張するために起こることがあります。

【更年期の頭痛|対処法】
更年期のふた通りの頭痛には、それぞれ次のような対処法が有効です。

緊張型頭痛

  • 適度にストレッチや運動をして血行を良くする
  • 肩や首をホットタオルで温める
  • ぬるめのお湯にゆっくり浸かる

片頭痛

  • 部屋を暗くして休む
  • 痛む部分を冷やす
  • アルコールやカフェインの摂取を控える

参照:月経に関連する片頭痛の遺伝子多型解析|山梨県立中央病院女性専門科/国際医療福祉大学 /日本大学医学部附属板橋病院心療内科 他

3-2.めまい

「めまい」は、その原因によって分類されていて、更年期障害による「めまい」は、婦人科的要因、眼科的要因、内科的要因などによる平衡機能の異常を示さない『非前庭性めまい』になります。

具体的には、

  • 体がふらふらする
  • 床がぐらぐらしているようで真っ直ぐ歩けない
  • 天井がぐるぐる回っているような感じがする
  • 目の前が暗くなる、気が遠くなる

といった症状が表れます。

【更年期のめまい|原因】
更年期のめまいの主な原因は、女性ホルモン(エストロゲン)の減少による自律神経の乱れです。
また、加齢による心身の機能低下及び、ストレスなどの精神的要因も一因となります。更年期になって卵巣の機能が低下し、脳からの指令通りのエストロゲンが分泌できなくなると、脳の視床下部は混乱してパニックに陥ります。
先述のように、視床下部には自律神経を調整する働きがあり、視床下部がパニックを起こすと自律神経のバランスも崩れてしまいます。

それに加えて感覚器官の加齢変化によって、めまいや耳鳴りなどの症状が出やすくなります。

【更年期のめまい|対処法】
めまいを感じたら、できるだけ安静にしてめまいが治まるのを待ちましょう。
日頃からめまいが起きないようにする予防として次のような対処法が有効です。

  • 塩分を控えたバランスの良い食生活を心がける
  • 血圧の安定が期待できる青魚類を多めに摂る
  • 心配ごとを溜め込まないようにする
  • 毎日できるだけ同じ時間に就寝、起床し、睡眠習慣を整える

3-3.イライラ感

更年期になると、今まできにならなかったちょっとしたことにイライラしたり、怒りやすくなることがあります。

具体的には、

  • 何もないのに不機嫌
  • すぐカッとなって感情のコントロールができない
  • 些細なことが気になってイライラする

といった症状が起こります。

【更年期のイライラ感|原因】
更年期のイライラ感の大きな原因は、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの減少です。

セロトニンは精神を安定させる働きをする脳内の神経伝達物質です。
更年期になると、エストロゲンの減少によりセロトニンの生成も低下し、感情がコントロールされにくくなります。

また更年期は、老いの予感を感じたり、家族関係の変化などでストレスを受けやすい時期でもあり、そうした心理的、社会的な状況もイライラなどの症状に影響することが考えられます。

【更年期のイライラ感|対処法】
更年期のイライラ感を抑えるのには、次のような対処法が有効です。

  • 深呼吸する
  • 気の合う人と話す時間をつくる
  • 毎日7時間以上の睡眠をとり、寝起きは朝の光を浴びる
  • 日常的に適度な運動やストレッチをする
  • 更年期のイライラの症状を和らげる大豆イソフラボン(※)を毎日摂る
  • 趣味など自分が没頭できるものを見つける


(※)大豆イソフラボンを含む食品:豆腐、納豆、豆乳、厚揚げ、味噌汁などの大豆製品全般

3-4.不安感

更年期の時期によく現れる症状のひとつに、不安感があげられます。

具体的には、

  • 理由もなく暗い気持ちになる
  • 心がざわついて落ち着かない
  • 孤独を感じる
  • 落ち込みが激しい
  • 疲れて気力がない
  • このままで良いのかと将来や人生について不安を感じる

といった症状が起こります。

【更年期の不安感|原因】
更年期の不安感の主な原因は、女性ホルモン(エストロゲン)の減少による自律神経の乱れです。
また、加齢による心身の機能低下及び、ストレスなどの精神的要因も一因となります

更年期になって卵巣の機能が低下し、脳からの指令通りのエストロゲンが分泌できなくなると、脳の視床下部は混乱してパニックに陥ります。先述のように、視床下部には自律神経を調整する働きがあり、視床下部がパニックを起こすと自律神経のバランスも崩れてしまいます。

また更年期は、親の介護などで老いの予感を感じたり、家族関係の変化など大きなストレスが重なりやすい時期でもあり、その影響で抑うつや不安感を感じやすくなることが考えられます。

【更年期の不安感|対処法】
不安感を抑えるのには、次のような対処法が有効です。

  • 深呼吸する
  • ポジティブな言葉を唱える
    (例:「私は大丈夫」「きっとうまくいく」「平気」「人は人」)
  • 日常的に適度な運動やストレッチをする
  • 更年期の症状を和らげる大豆イソフラボン(※)を毎日摂る
  • 趣味など自分が没頭できるものを見つける

(※)大豆イソフラボンを含む食品:豆腐、納豆、豆乳、厚揚げ、味噌汁などの大豆製品全般

更年期の消化器系の2つの症状|原因と対処法

次に、「消化器系」の2つの症状の原因と対処法を解説します。

あなたはこんな症状に悩んでいないでしょうか。みていきましょう。

4-1.排便障害(下痢・便秘)

更年期の症状のひとつに、下痢や便秘などの排便障害があります。

具体的には、

  • 腹痛を伴った下痢
  • コロコロの硬い便が出る
  • 排便してもスッキリ感がない
  • 下痢と便秘を繰り返す

といった症状が現れます。

【更年期の排便障害|原因】
更年期の排便障害は、女性ホルモン(エストロゲン)の減少によって自律神経が乱れ、腸のぜん動運動に不調をきたすことが原因となって起こります。


自律神経の乱れは、この時期に起きやすい精神的ストレスによっても引き起こされます。
また、ストレスで食事が摂れていなかったり、加齢による腹筋力の低下で便をきちんと押し出せないといったことも一因となります。

【更年期の排便障害|対処法】
更年期の排便障害には、次のような対処法が有効です。

  • 1日3食の規則正しい食生活を心がける
  • 食物繊維の多い食品(※)を摂る
  • 乳酸菌を取り入れる
  • なるべく7時間以上の睡眠をとる
  • 毎日適度な運動をする

(※)食物繊維の多い食品:キノコ類、海藻類、豆類、芋類、根菜、果物など

4-2.吐き気

更年期症状のひとつとして、胃腸の調子が悪くムカムカしたり、吐き気を感じることがあります。

前触れなく、次のような症状が出て、突然嘔吐してしまうケースもあります。

  • 急に気持ち悪く胃がムカムカしてくる
  • つわりのような吐き気がする

吐き気の頻度はさまざまで、頻繁に突発的に起こったり、長時間続いてしまう人もいます。

【更年期の吐き気|原因】
吐き気も他の更年期症状と同様に、女性ホルモン(エストロゲン)の減少で自律神経のバランスが乱れることが原因で起こります。

胃腸は、副交感神経(※)が優位なリラックスしている状態で働く臓器。自律神経のバランスが乱れ、交感神経が優位になっていると、胃腸の不調や吐き気といった症状が現れてしまいます。

(※)自律神経には、体を活動モードにする「交感神経」と、休養&回復モードにする「副交感神経」の2種類があり、状況に応じてどちらかが優位になって、体のあらゆる働きをコントロールしている

【更年期の吐き気|対処法】
吐き気がある時は安静にして休むようにしましょう。
日頃から吐き気が起きないようにする予防として次のような対処法が有効です。

  • 塩分を控えた消化吸収の良い食生活を心がける
  • 心配ごとを溜め込まないようにする
  • 毎日できるだけ同じ時間に就寝、起床し、睡眠習慣を整える
  • 更年期症状改善に効果のある大豆イソフラボン(※)を摂る

(※)大豆イソフラボンを含む食品:豆腐、納豆、豆乳、厚揚げ、味噌汁などの大豆製品全般

更年期の運動器官系の3つの症状|原因と対処法

最後にご紹介するのは、「運動器官系」の3つの症状です。

原因と対処法を解説します。

5-1.肩こり

更年期の時期に、これまで意識していなかった人にも肩こりの症状が表れることがあります。

肩だけでなく、首から背中にかけてこわばりや怠さを感じる人も多く、頭痛や吐き気を伴うケースも珍しくありません。

【更年期の肩こり|原因】
肩こりは、肩甲骨から首の間の筋肉が緊張して、血行が悪くなり、疲労物質が筋肉の中に溜まることが原因で起こります。

更年期に肩こりが増えるのは、加齢による筋骨格系の老化と様々なストレスなどの社会的背景が原因と考えられます。

特に女性は男性に比べて、肩の周りの筋肉が少ないために、症状が出やすくなります。

【更年期の肩こり|対処法】
更年期の肩こりの症状は、日常生活に次のような工夫をすることで少しずつ緩和できます。

  • 蒸しタオルや使い捨てカイロを使って肩を温めて血行を良くする
  • 毎日ラジオ体操やストレッチなど適度な運動をする
  • 同じ姿勢を1時間以上続けないことを意識する(※)

(※)家事や仕事などで同じ姿勢を続けることが多い人は、1時間ごとに姿勢を変えてみましょう。
デスクワークの人は、ときどき立って腕や肩を動かすと効果的です。

5-2.疲労感

更年期に多くの人が感じるのが「疲労感」です。

具体的には、次のような症状が現れます。

  • すぐ疲れる
  • 寝ても疲れがとれない
  • 朝起きたときからだるい
  • 体が重い
  • やる気が起きない
【更年期の疲労感|原因】
疲労感の原因はまだ明確ではありませんが、女性ホルモン(エストロゲン)の減少に起因する自律神経の乱れから、体の血行不良が起こり、臓器の機能や体温の低下、睡眠の質の低下などが重なって起こると考えられています
【更年期の疲労感|対処法】
更年期に感じる疲労感は、生活習慣を改善することで少しずつ緩和できます。

  • バランスの良い毎日3食の食事を心がける
  • 毎日7時間以上の睡眠をとる
  • 太陽の光を浴びて目覚める
  • 適度な運動をして体を動かす
  • 体を冷やさない
  • お風呂にゆっくり浸かる
  • ストレスを抱え込まない
  • 更年期症状改善に効果のある大豆イソフラボン(※)を摂る

(※)大豆イソフラボンを含む食品:豆腐、納豆、豆乳、厚揚げ、味噌汁などの大豆製品全般

5-3.しびれ

更年期に現れる症状のひとつに、「しびれ」があります。

具体的には、

  • 手足がしびれる
  • 手足の感覚が鈍くなる
  • 皮膚の表面がピリピリする

といった症状が出ます。

感覚の異常や病気が原因で起こる「しびれ」と違って、しびれる感覚とともに、皮膚の乾燥が目立ちやすくなる点が特徴です

このように更年期の症状は多様ですが、更年期の年代は、女性特有の疾患や生活習慣病を発症しやすい時期でもあります。
中には更年期障害とよく似た紛らわしい症状が出る疾病もあり、「更年期だから…」と思い込んでいたら重篤な状態にまで発展してしまう恐れがあります。

【更年期のしびれ|原因】
更年期の「しびれ」は、女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少で、血流の調節を行う自律神経が乱れることによって引き起こされます
【更年期のしびれ|対処法】
しびれが起きたときは、患部をやさしくマッサージして血行改善を促しましょう。


日頃からしびれ対策として行う予防法では、

  • バランスの良い食事を心がける
  • 血管の健康状態を良くするビタミンCや、血液の流れをよくするビタミンEを摂る(※)
  • 適度な運動を日常に取り入れる

などが有効です。

(※)ビタミンCが豊富な食品:ブロッコリー、キーウィ、赤ピーマン、黄ピーマン、菜の花 など
ビタミンEが豊富な食品:卵、アーモンド、オリーブオイル、アボカド、かぼちゃ、大豆 など

今の症状に少しでも疑問を感じたときは、自分で更年期障害と判断せず、病院で正しい診断を仰ぐことをおすすめします。

更年期を乗り越えよう!症状緩和のために今日から始める3つのケア

更年期の症状を緩和するために、今日からできる3つのケアをご紹介します。

バランスの良い食事をとる
毎日適度に体を動かす
十分な睡眠をとる

年齢による体の変化で起きる更年期障害は抗いようのないものですが、自分の身体の声に耳を傾け、生活習慣を見直すことで、症状の緩和が望めます。

順に解説しますので、しっかり把握して更年期の心身をセルフケアしていきましょう。

6-1.バランスの良い食事をとる

更年期の症状緩和のために、毎日バランスの良い食事を摂ることを心がけましょう
食生活を見直し、不足している栄養素を摂ることで、体調の改善が見込めます。

更年期症状で疲労感や精神的な落ち込みを抱えると、食に対する興味を失い、偏った食品しか摂らなくなる傾向があります。
そのせいで、更年期に不足しがちな栄養素がとれず、症状を悪化させることも少なくありません。

以下の点に気をつけて、野菜や大豆製品を取り入れたバランスの良い食事を摂りましょう。

  • 朝食はかならず食べる
  • 間食をやめる
  • 塩分の摂り過ぎに注意する
  • 暴飲暴食や過度の飲酒は控える

大豆や大豆製品(豆腐、納豆、煮豆、おから、味噌など)に多く含まれているイソフラボンは、体内で女性ホルモンの「エストロゲン」と同じ働きをする物質として知られています。
更年期症状の改善だけでなく、骨量の減少を抑えたり、コレステロール値の上昇を抑える作用もあるので、毎日の食卓に加えることをおすすめします。

6-2.毎日適度に体を動かす

毎日適度に体を動かすようにしましょう。
ウォーキングを中心とした適度な運動が、更年期の症状緩和に有効であることが、昨今の研究で明らかになっています。

適度な運動は乱れた自律神経を整え更年期症状の緩和だけでなく、悪化の予防にも役立ちます。
また、ウォーキングなどの有酸素運動は脂肪を落とす運動としても適しているため、ダイエットにも効果的です。

運動が苦手な人は、以下を参考に日常生活の中で「身体を動かす方を選ぶ」という無理のない形での方法を試してみてください。

  • 駅まで、スーパーまで、短距離でも毎日かならず歩く
  • エレベーターより階段を優先する
  • 景色も楽しめる散歩を日課にしてみる

また、「信号待ちの時間に伸びをしてみる」「歯磨きしながらかかとを上げ下げしてみる」など、ちょっとしたことの積み重ねが筋力アップにつながり、体と心が安定しやすくなります。

参照:立教大学学術リポジトリ|運動習慣を有する更年期の女性ランナーにおける不定愁訴と気分|梶原洋子、樽本つぐみ
CiNii|中年期女性のテニス継続が更年期症状に及ぼす影響
中年女性の更年期症状および抑うつ症状に対するストレッチの効果:ランダム化比較試験 ―Menopause に掲載された英語論文の日本語による二次出版―

6-3.十分な睡眠をとる

毎日十分な睡眠をとることを心がけましょう。
睡眠に問題があると、脳に疲れがたまって自律神経のバランスが乱れ、女性ホルモンにも悪い影響を与え更年期の症状が悪化します。

質の良い睡眠をとるために、次の2点を取り入れましょう。

  • 眠る3時間ほど前までに食事を済ませる
  • 入浴で体を温めリラックスする

食べ物を消化するにはおよそ2~3時間かかるので、快眠のためには就寝の3時間前には食事を済ませておくのが理想です。
また、良質の睡眠に欠かせないのが入浴です。
お風呂にゆっくり浸かり、体を温めることで、体も心もリラックスして休息できます。

睡眠不足はホルモンバランスを乱すだけでなく、高血圧などの生活習慣病の発症や悪化をもたらすなど、健康に多大な影響を及ぼす恐れもあります。

こうした健康被害を避けるためにも、十分な睡眠時間をとり、睡眠の質を高める努力をしていきましょう。

サプリもおすすめ|更年期を乗り切るために東洋医学を取り入れよう

セルフケアについてお伝えしましたが、女性ならではの不調に特化したサプリメントを飲むのも、更年期対策のひとつです。

更年期症状の緩和を謳うサプリメントは数多くありますが、おすすめしたいのは、東洋医学の見地から生まれた漢方(伝統生薬)由来のサプリメントです

ここまでお伝えしてきたように更年期の症状は多岐に渡り、複雑化していて、一般的なサプリメントにありがちな単一成分では根本的な改善につながりません。

漢方(伝統生薬)由来のサプリメントは、心身のバランスを整えることからアプローチし、不調をゆるめて改善するために目的に沿った成分がバランスよく配合されています。

これを理解するには、東洋医学の「五行(ごぎょう)」という考え方について知って頂く必要があります。

7-1.東洋医学の五行|更年期は「木(肝)」の衰え

東洋医学では、からだの不調や症状を「からだ全体のバランスの崩れ」ととらえます。

その根幹にあるのが、万物を構成する要素を「木」「火」「土」「金」「水」の5つに分類し、それぞれの要素が支え合い、影響しあって、絶妙なバランスで成り立っているとする「五行論」です。

これは、人の体にも同じことがいえ、東洋医学では五行に人間の身体を支える5つの要素「肝・心・脾・肺・腎」をあてはめています。


(肝)
<女性特有の不調>
更年期・生理不順・血の滞り

(心)
<心の安定>
不眠・ストレス・不安

(脾)
<体の巡り>
冷え・むくみ・消化不良

(肺)
<免疫力>
免疫力低下・アレルギー・呼吸器不調

(腎)
<身体機能>
肉体疲労・機能低下・肌老化

女性ホルモンの減少が引き起こす更年期の不調は、五行論にあてはめると、「木(肝)」の衰えに関わるものです。

「木」の衰えは、やがて「火」や「土」など他の不調を引き起こします。
反対に、「木」を整えていくことで、「火」と「土」も整えることができます

体の状況を五行から導き、不調に対処するため、目的に沿った成分をバランスよく配合した生薬を処方するのが東洋医学の考え方です。
これは、不調の表れ方が複雑で多岐に渡る更年期の症状改善に大変効果があります。

7-2.更年期に効果的な天然由来成分

更年期の不調には、悩みに総合的にアプローチする漢方のサプリメントを選びましょう。

漢方のサプリメントには、吸収率が高い天然由来成分が配合されていて、栄養素が体内で効率的に働くことが期待できます

具体的には、下表に示したような成分配合のサプリメントが女性ならではの不調におすすめです。

特に「麹菌発酵大豆イソフラボン」は、女性ホルモン(エストロゲン)とよく似た分子構造をしており、体内で同じような働きをするため、摂取することで更年期のホルモンバランスの乱れから起きる症状が緩和されます。

その他もそれぞれ更年期障害の予防や改善に効果のある成分です。

女性の不調に効果がある成分 主な効能

麹菌発酵大豆イソフラボン
  • 更年期障害の予防、改善
  • 肌の調子を整える
  • 骨粗しょう症の予防
  • 悪玉コレステロールの低下

高麗人参
  • 更年期障害の緩和
  • 疲労回復
  • 滋養強壮
  • 抗酸化作用

クコの実
  • 血行促進による冷え性改善
  • 貧血予防
  • 疲労回復
  • ホルモンのバランスを整える

沙棘
  • 更年期障害の緩和
  • 抗酸化力向上
  • 冷え症、むくみの改善
  • 精神疲労回復

食事や運動、睡眠の生活習慣を見直すことに加え、自分に合ったサプリメントを選んで、明日が楽しみになる軽やかな心身を培っていきましょう。

まとめ

更年期とは、女性の閉経をはさんだ45才〜55才くらいの約10年間を指します。
更年期障害は、女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少によって起きる自律神経の調節不良や心身の不調が日常生活に支障をきたしてしまう状態のことです。

更年期障害の症状は多種多様です。
程度にも個人差があり、また1つの症状ではなく、2つ以上の症状が複合的に現れるケースも多くあります。

年齢による体の変化で起きる更年期障害は抗いようのないものですが、生活習慣を見直したり、サプリメントで栄養素を補充することで症状の緩和が望めます。

自分の体の声に耳を傾け、前向きに年齢を重ねていきましょう。

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