「50代になってから、明らかに疲れやすくなってきた」
「更年期の症状が、40代までとなんだか違うような気がする」
50代に突入し、これまでとは異なる体調の変化に不安を感じていますね。
実は、女性は50代になると、ほかのどの世代よりも自分自身の健康について悩むようになります。
参考:養命酒製造株式会社「女性の冷えと不調に関する調査2021」
40代までは家計や仕事の悩みが多かった女性たちの関心が、50代になるとその3分の1以上が、自分自身の健康に向けられていることがわかります。
なぜなら、50代になると、女性は更年期症状に加えて肉体の物理的な機能低下によって、40代までとは異なる体の不調が新たに起きてくるからです。
また、高血圧などの生活習慣病の心配が出てくるのも、50代女性の特徴です。
そこでこの記事では、人生のターニングポイントとも言える50代女性の体の変化について、その症状や原因、気を付けるべきことをまとめてお伝えしていきます。
この記事を読むことで、50代女性の体の悩みについて理解し、症状とのつき合い方や緩和策などを知ることができます。
目次
データで解説!女性の体の悩みは40代と50代でこんなに違う
50代で新たに出てくる体の悩みは、主に以下の2つによるものです。
- ピークを迎える更年期症状と閉経後症状
- 身体機能の低下による症状
それぞれどんな症状があるのか、具体的に見ていきましょう。
1-1.ピークを迎える更年期症状と閉経後症状
更年期症状はおおむね45歳くらいから始まり、平均して50歳から51歳の閉経を機に、50代前半でピークを迎えます。
更年期症状は40代から続くものですが、50代後半になると、更年期症状に加えてさらに閉経後症状が起こってきます。
実際、厚生労働省の国民生活基礎調査でも、「もっとも気になる症状」として、50代女性では更年期症状よりも閉経後症状によるものがランキングの上位に上がってきています。
参考:国民生活基礎調査 令和元年国民生活基礎調査 健康 全国編・有訴者数,年齢(5歳階級)・最も気になる症状・性別
また、閉経後症状のひとつである尿のトラブルについても、花王株式会社の行った郵送調査によると、女性は50代でもっとも尿もれを発症しやすいことが分かっています。
このように、50代では頭痛やめまいなどの更年期症状が減ってくる代わりに、閉経後症状としての尿もれや関節痛、粘膜のトラブルが増えてくるのです。
1-2.身体機能の低下によるさまざまな症状
50代になると、老眼や難聴など、加齢による身体機能の低下によるさまざまな症状が出てきます。
具体的な部位とそれぞれの大まかな症状は、以下の通りです。
50代になると、これらの症状が現れる可能性が一気に高まるのです。
それぞれの症状について、40代までとの比較をしながら見てみましょう。
1-2-1.老眼
老眼とは、年齢を重ねることによって目のピント調節能力が低下して、近くのものが見えにくくなる症状です。
40代から気になり始める人が多いですが、50代になると手の届かない距離まで遠くに離さないと見えにくくなるため、実生活に支障をきたす場面が出てきます。
参考:一般財団法人京浜保健衛生協会「特殊健康診断の検査結果」
40代までは自分の手で距離を調整することができますが、近点距離がどんどん遠くなることで自分の手の届く範囲では追いつかず、老眼鏡の助けが必要になってくるのが50代なのです。
1-2-2.加齢性難聴
加齢性難聴とは、加齢によって起こる難聴で、「年齢以外に特別な原因がないもの」を指します。主に高い音と小さい音が聞こえにくくなります。
鼓膜から伝わってきた音の振動をキャッチし、電気信号に変えて脳へ送る役割をする「有毛細胞」が、加齢とともに壊れてなくなっていくのです。
いったん壊れた有毛細胞は再生することはないため、加齢性難聴は基本的に治りにくいものとされていて、通常は両方の耳が聞こえにくくなるのが特徴です。
独立行政法人国立病院機構 東京医療センターと慶應義塾大学の合同研究「10代から90代までの男女別聴力変化パターン」によれば、40代から聴力低下が顕在化しはじめ、加齢とともに”低音部の聴力低下が認められる”とのことです。
加齢性難聴になると、外出先で危険に遭いやすくなったり、災害時の警報が聞こえにくくなったりと、実生活における危険度が上がってきます。
自覚がある場合は絶対に放置せず、補聴器などを活用することをおすすめします。
1-2-3.腕と手の筋力低下
女性は50代になると、握力が低下していきます。
参考:スポーツ庁「平成29年度体力・運動調査結果」の概要及び報告書について
握力が低下すると、それまで気にせず持てていた物がだんだんと持てなくなったり、物を落としやすくなります。
大切な物を壊してしまうだけでなく、落下物によるケガや調理中の火傷・火災などが起こりやすくなるため、細心の注意が必要になってきます。
1-2-4.脚と足の筋力低下
手だけでなく、下半身の筋肉量も減っていきます。
女性は50代から全身の筋力量の低下が目立ってきますが、特に下肢の筋肉量が大きく減少していくのです。
参考:日老医誌 2010;47:52―57「日本人筋肉量の加齢による特徴
下半身の筋肉が減ると、転びやすくなったり疲れやすくなったりするために、出歩くことが怖くなって家に引きこもりがちになるケースも多くなります。
加齢による自然な筋肉量の減少をそのままにして運動をしないでおくと、うつや不眠、認知症のリスクも高まるため、少しでも外に出て、運動習慣を生活の中に取り入れることが大切です。
1-2-5.骨粗鬆症
骨粗鬆症とは、骨の量が減って骨が弱くなることで骨折をしやすくなる病気です。 50代になると、特に女性で骨粗鬆症の有病率が高まります。
これは閉経に伴って女性ホルモンが減少することに関係しています。
女性ホルモンは、骨の生成にも関わっているため、閉経によって体内で産生されなくなることで、骨が弱くなってしまうのです。
平均して50歳から51歳の閉経に向けて、40代後半から女性ホルモンが減少していく中で、骨はそのままにしておくとどんどん弱くなっていきます。
1-2-4.脚と足の筋力低下の項でもお伝えしましたが、50代になると下半身の筋肉量の低下に伴って転倒しやすくなるだけでなく、骨が弱いために骨折しやすくなるのです。
骨の生成を助けるビタミンDやカルシウムなどを積極的に摂取し、軽い運動によって骨を強くする日常的な心がけが大切です。
1-2-6.嚥下機能低下
嚥下(えんげ)とは、食べ物を認識するところから始まり、口の中に入れて噛み、飲み込んで正しく食道から胃へと送り込む一連の動作のことです。
この機能が低下すると、食べることそのものが楽しくなくなるため、栄養不足になって体重が減少したり、栄養が摂れないために動くのがおっくうになりさらに食欲がなくなる…という、悪循環を引き起こします。
また、日本人の死亡理由第3位である肺炎は、実は嚥下機能の低下によって引き起こされているというデータもあります。
出典:日本医事新報社 高齢者肺炎の基本的知識 ─現状から発症メカニズムまで
50代になると、代謝が落ちて痩せにくくなることから、無理なダイエットに走る女性も少なくありません。
しかし実は「おいしく食べられる」ことは、この先年齢を重ねるに連れてどんどん貴重なことになっていくのです。
食器や盛り付けを変えてみたり、お気に入りの調味料を見つけたりしながら、食べることがおっくうにならないような工夫をすることも大切です。
50代女性の体の悩みは「老化だから」と諦めるべきものではない
50代女性の体の悩みは、ホルモンバランスの変化や身体機能の低下によるものなど、物理的な機能の変化に起因するものが多く、根本から解消することは難しいと言えるでしょう。
しかし、それを「老化だから」と諦めてしまっては、一生体の悩みから解放されることはありません。
年齢による変化が訪れることは認めつつ、より快適に暮らすための具体的な対策を行うことが大切です。
それぞれの悩み別に、以下のような対策があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1.更年期症状と閉経後症状への対策はホルモンバランスの調整
更年期症状と閉経後症状を緩和するための対策は、物理的に失われるホルモンを補う方法です。
女性ホルモンであるエストロゲンを体内に直接補う方法と、エストロゲン様作用を起こす成分を補う方法のふたつがあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1-1.ホルモン補充療法(HRT)
ホルモン補充療法は、HRT療法とも呼ばれ、減少したエストロゲン(卵胞ホルモン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)を補充する療法です。
※子宮がない場合は、エストロゲンのみを補充します。
婦人科で症状を伝え、問診や血液検査を受けて問題がなければ処方されます。
保険適用で自己負担も少ないため、更年期障害の根本的な治療法としてもっとも期待されている一方で、特に飲み始めの数日から数週間は、人によっては重い副作用が出る場合があります。
胃腸や肝臓への影響が少なからずあるため、処方後も定期的に血液検査をしてリスクを回避します。
2-1-2.漢方薬またはサプリメントの活用
東洋医学の漢方薬は、無理なく自然に体質改善してくれるものが多く、その人ごとの体質や体型に合わせた処方がされます。
近年の研究では、保険適用の漢方薬による更年期障害治療の成果についても、科学的根拠に基づいたデータが確認されています。
また、サプリメントでも、以下のような成分が含まれているサプリメントであれば、ホルモンバランスを調整し、更年期や閉経後のさまざまな症状を和らげてくれます。
大豆イソフラボンというと、体内で女性ホルモン様の働きをすることで有名ですが、中でも、特に「エクオール」の産生を促すことのできる成分を含んだものをおすすめします。
エクオールは腸内細菌によってイソフラボンから産生されるもので、女性ホルモンのエストロゲンに構造が似ているため、体内で女性ホルモンと似た働きをするとされているものです。
実は、イソフラボンからエクオールを産生できる人は、エクオール産生菌とよばれる腸内細菌の保有者でもわずか22%しかいないことが分かっています。
つまり、せっかくイソフラボンを摂取しても、8割の女性はエクオールの産生ができず、効果がないのです。
そのため、イソフラボンを摂り入れる場合は、エクオールの産生を促すことのできる成分を選ぶことが、重要になってくるのです。
とはいえ、エクオールそのものが配合されていたり、エクオール産生を促す効果があるものであればどんなサプリメントでもいいかというと、そうではありません。
大事なのは五行のバランスを考えた、さまざまな栄養素が配合されたものを選ぶこと。
エクオールだけをサプリメントで摂取するのでは、なくしたものを物理的に補うという、西洋医学的な考え方と同じです。
更年期という体の変化に着目しながら、体内のすべての器官や機能のバランスを整えていくためには、エクオールを含みながら総合的な体質改善を目指すことのできるサプリメントを生活に取り入れつつ、これから先の長い生活習慣病のケアしていくのが良いでしょう。
2-2.身体機能の低下による症状への対策は軽い運動
実は、40代までの女性では、定期的な運動習慣のある人は1割ほどしかいません。
※「運動習慣」とは、週に2回以上、1回30分以上の運動をすること
ご覧いただくと分かるように、運動習慣のある20~40代の女性は、それぞれの年代のわずか10%前後にとどまっているのです。
この世代の女性は、仕事や家事・育児に追われて生活の中に運動習慣を取り入れる時間がないというのが主な理由のひとつです。
また、1-2-4.脚と足の筋力低下の項でもお伝えしましたが、特別な運動習慣がなかったとしても、40代までは筋力の低下がさほどないことも、わざわざ時間をかけてまで運動をする必要性を感じさせない一因になっているのでしょう。
一方で注目したいのは、50代になると、生活に運動習慣を取り入れる女性は40代までの倍に増えるということ。
子育てのひと段落する50代のこのタイミングで、生活に運動習慣を取り入れるおよそ4分の1の側に移るか移らないかで、筋力低下や骨粗鬆症、生活習慣病の危険を回避できるかどうかが変わるのです。
もちろん、必ずしも「運動」だけが有効なものではありません。
大切なのは、50代の体の悩みを「諦めて何もしない」のではなく、「受け入れて対策する」ことです。
次の章では、50代女性の体の悩みを緩和するための5つの対策法を詳しくお伝えしていきます。
50代が抱える複雑な女性の悩みには東洋医学の考え方も取り入れるのがおすすめ
3-1.50代女性の体の悩みには東洋医学がおすすめな理由
女性の体の仕組みとして、50代でほぼ女性ホルモンのエストロゲンが産生されなくなってしまうのは、ごく自然なことと言えます。
とはいえ、「自然なことだから」「病気ではないのだから」と、ホルモンバランスの変化によって起こるつらい症状を我慢する必要はありません。
西洋医学では病名のつきにくい慢性的な体の不快感や不調を改善するには、東洋医学の考え方を取り入れて、自己治癒力を高めていくことで対応ができます。
東洋医学では、自然界のすべてのものは5つの属性に分けた「五行」でできているとされています。
人間の身体も、性質と機能によって「五臓」に分けることができ、それぞれが持つ性質によって自然界と同じ「五行」に割り当てることができるのです。
ご覧いただくとわかるように、体の中のすべての臓器や機能は相関しあっています。そのため、50代女性に多い関節痛やだるさという症状を見てそこだけに対応するのではなく、更年期や閉経後という体の変化に着目しながら、すべての器官や機能のバランスを取っていき、体の内側から体質そのものを変えていくことが大切なのです。
東洋医学の考えを取り入れることで、自律神経の働きを整え、体の各機能を活性化させることで、さまざまな更年期・閉経後症状を緩和することができます。
3-2.50代女性のサプリメント選びは「自分の体に合っていること」が大切
漢方薬は東洋医学の考えに基づいて医師の診断によって処方されますが、サプリメントは基本的に自分で選ぶものなので、しっかりとした判断基準を持っておくことが大切です。
2-1-2.漢方薬またはサプリメントの活用の項でもお伝えしましたが、更年期や閉経後、加齢による身体全体の変化には、不足している成分単体を補うだけでは、期待する効果は得られません。
大切なのは、あなたの体の悩みを引き起こす原因を把握し、局所的な対処をするのではなく、総合的にバランスを整える方法を探ること。
サプリメントも、あなたの不調の症状に合わせて、総合的にサポートしてくれるものを選びましょう。
また、サプリメントを選ぶ際には、以下の点にも注意してください。
サプリメントは体の中に取り込むものなので、売り手の謳い文句や見ず知らずの人のレビューを鵜呑みにすることなく、何よりもあなた自身に合っているかどうかをしっかりと考えて選ぶようにしましょう。
50代女性の体の悩みへの5つの対策法
年齢による変化を受け入れつつ、これからの日々を快適に過ごすための対策法は、以下の5つです。
それぞれどのようなものか、詳しく見ていきましょう。
4-1.心がときめく趣味を持つ
心をときめかせると、体内で実際に「幸せホルモン」が産生されます。
旅行でもアイドルでもダンスでも、「これが楽しい」「これが幸せだ」と感じている時には、以下のホルモンが脳内や腸内で産生されているのです。
更年期や閉経後症状によって気分の落ち込みが起きやすい中でも、心ときめく趣味を持つことで、気分が晴れて前向きな気持ちになることができます。
4-2.常に身だしなみを整える
常に身だしなみを整えておくことで、いつでも外に出られるフットワークの軽さを手に入れることができます。
フットワークが軽ければ、それだけ日光を浴びて外を歩き、人と合って話をしたり、風や音、温度などいろいろな刺激を五感に受けたりします。
実は、日光を浴びて歩くだけで、4-1.心がときめく趣味を持つで挙げたセロトニンという幸せホルモンが分泌されるため、気分の落ち込みやイライラ、うつなどを解消することができるのです。
また、友人やお店の人と目を合わせておしゃべりを楽しむだけでも、同じく幸せホルモンのオキシトシンが分泌されて、幸せな気持ちに満たされます。
突然のうれしいお誘いがあっても、白髪をそのままにしていた状態では、お誘いに乗ることができませんよね。
流行の服を着る必要はありませんが、現在の自分を素敵に見せてくれる服をきちんと身につけている女性は、行く先々で「レディ」として丁重に扱われることでしょう。
常に身だしなみに気を遣い、フットワークの軽い状態でいることで、更年期や閉経後の精神的な症状を和らげましょう。
4-3.たくさんの「色」を食べる
食事の時にたくさんの「色」を食べることを意識することで、さまざまな栄養素を無理なく自然に取り入れることができます。
実は、幸せホルモンのひとつであるセロトニンは、その80%が腸内で分泌される、ちょっと変わったホルモンなのです。
つまり、腸内環境を整えることで、幸せホルモンが分泌されやすくなるのです。
たくさんの「色」を食べることは、緑黄色野菜を中心とした食物繊維を豊富に取り入れることに繋がり、腸内環境の改善を計ることができます。
特にチーズや豆腐、ヨーグルトなどの白い食品は、セロトニンとドーパミンを増やすことで知られています。
また、「今回は◯色食べられた」と、色の数をカウントして小さな達成感を得ることでも、ドーパミンが活性化するのでおすすめです。
50代女性は、太りすぎても痩せすぎてもいけません。
たくさんの「色」を食べることで、これからを乗り切るための資本となる身体と、前向きな精神を手に入れましょう。
4-4.軽い運動をする
軽い運動を継続することで、筋力低下や骨粗鬆症を防ぎ、生活習慣病の危険性を軽減することができます。
子育てがひと段落し、自分の時間を持てるようになったのですから、家の中に閉じこもらず、ぜひ外を歩く程度の運動から、生活の中に取り入れていきましょう。
幸せホルモンのセロトニンが分泌されるだけでなく、適度な運動をすることで食欲も出てくるため、嚥下機能の低下による低栄養の影響を防ぐことができます。
特に、下半身の筋肉量は低下していく一方なので、「足腰を鍛える」ことを意識して、ちょっとずつ運動を取り入れてください。
4-5.1年に一度は健診を受ける
50代になると、がん、心疾患、脳血管疾患の3大疾病のリスクも高くなります。とくに女性が罹患しやすいがんは、ほとんど初期の自覚症状がないものです。
自覚症状が出てからの発見では遅すぎる場合もあるため、一般的な健康診断やホルモン検査など、専門医で定期的に健診を受けるようにしましょう。
まとめ
今回は、50代女性の体の悩みについて、40代までとの違いやその原因について詳しくお伝えしました。
50代女性では、40代までの更年期症状に加え、さらに以下のような閉経後症状が現れてきます。
加齢による身体機能の低下は、以下の通りです。
それぞれの症状の原因別の対策法は、以下の通りです。
体の悩みを緩和するために、50代女性が日頃から気をつけておきたいのは、以下の5点です。
50代女性が避けて通ることのできない体の変化を受け入れ、それぞれの原因ごとに対処して、前向きな毎日を送ることができますように。