「トリプトファンにはどのような効果がある?」
「トリプトファンをうまく摂取するためにはどうしたらいい?」
トリプトファンについて、このような疑問をおもちではありませんか?
トリプトファンには、以下のような効果があります。
トリプトファンはほとんどの場合、食事から必要量を摂取することができます。
むしろ、過剰摂取による弊害があるため、サプリメントの活用は慎重に判断する必要があります。
トリプトファンを安全に摂取し、期待する効果を得るためには、正しい知識が欠かせないのです。
そこでこの記事では、以下について詳しく解説します。
この記事を読むことで、トリプトファンの効果とその理由がよくわかります。
また、効果を得るためにはどのようにすべきかということも理解できます。
栄養素をうまく活用して健康的な生活を送るための第一歩として、ぜひ最後までお読みください。
目次
トリプトファンを摂取することで期待できる6つの効果
トリプトファンとは体内で作ることができない必須アミノ酸の一つで、「セロトニン」という神経伝達物質の原料になります。
セロトニンが増えるということがトリプトファンを摂取する最大のメリットであり、トリプトファンの効果もそこに集約されます。
セロトニンは、サプリメントとして摂取することができず、体内で合成するしかありません。
そのため、原料となるトリプトファンを増やすことでセロトニンの合成を促進しようというわけです。
トリプトファンの効果には、以下の6つがあります。
それぞれの内容について、解説していきます。
1-1. 精神が安定しポジティブな気持ちになる
トリプトファンの代表的な効果は、精神が安定しポジティブな気持ちになることです。
トリプトファンから作られるセロトニンには、他の神経伝達物質であるドーパミンとノルアドレナリンをコントロールする働きがあるからです。
ドーパミンが増えると喜びや快楽などを強く感じ、ノルアドレナリンが増えると恐怖や驚きなどを強く感じます。
セロトニンはこれらのバランスを整えることで、精神を安定した状態に保つのです。
実際に、セロトニンの不足はうつ病や不安障害の一因だとされており、治療としてセロトニンの分泌を促す薬が使われます。
1-2. 睡眠の質が上がり寝起きがよくなる
トリプトファンには、睡眠の質が上がり寝起きがよくなるという効果もあります。
これには、トリプトファンから作られるセロトニンと、セロトニンから作られるメラトニンの働きが関係しています。
メラトニンとは、セロトニンを原料として作られるホルモンで、睡眠・覚醒や体内時計を調整する作用をもちます。
1-3. 自律神経の働きが整う
トリプトファンを摂取すると、自律神経の働きが整います。
トリプトファンから作られるセロトニンに、自律神経の働きを調整する作用があるからです。
自律神経には、交感神経と副交感神経の2種類があります。
交感神経は心身の活動性を高め、副交感神経はリラックスを促します。
交感神経と副交感神経のバランスが乱れると、以下のようにさまざまな不調があらわれることがあります。
- 倦怠感
- 動悸・息切れ
- 頭痛・めまい
- 肩こり
- 不眠
- 食欲不振や腹痛など
これらは自律神経失調症の症状であり、他に明らかな病気がないにもかかわらず続くのが特徴です。
トリプトファンを摂取してセロトニンを増やせば、このように「なんとなく調子が悪い」状態を改善できる可能性があるのです。
1-4. 痛みが和らぐ
トリプトファンには、痛みを和らげる効果もあります。
トリプトファンから作られるセロトニンが、痛みの感覚を抑制するからです。
痛みとは、体のどこかに加わった痛み刺激が電気信号となって脳まで伝わり、痛いと感じるシステムになっています。
セロトニンはこの電気信号を途中でキャッチし、脳に伝わらないようにするのです。
鎮痛剤のような即効性と強い作用があるわけではありませんが、トリプトファンの摂取によって十分なセロトニンが分泌できていれば、そうではない場合に比べて痛みを感じにくいコンディションで過ごすことができます。
1-5. アンチエイジングにつながる
トリプトファンの摂取は、アンチエイジングにもつながります。
トリプトファンからセロトニンを経て作られるメラトニンに、強力な抗酸化作用があるからです。
老化とは、抗酸化力が低下し細胞が活性酸素によるダメージを受けた状態です。
メラトニンは、睡眠中に体内の活性酸素を除去してくれるのです。
その結果、皮膚の弾力が増して若々しく見えるなどの外見面に加えて、動脈硬化など健康上問題となる老化を穏やかにすることも期待できます。
1-6. 更年期の症状やPMSが緩和する
トリプトファンには、更年期の症状やPMS(月経前症候群)を緩和する効果もあります。
トリプトファンから作られるセロトニンが、自律神経の働きを整え、痛みの感覚を抑制するからです。
更年期の症状やPMSの発症には、女性ホルモン分泌量の変化によって自律神経の働きが乱れることが関係しています。
そこでセロトニンを増やすことができれば、発症そのものを抑制できる可能性があるということです。
また、セロトニンが痛みを緩和してくれれば、症状が出たとしてもあまり辛い思いをせずに済むでしょう。
【トリプトファンを含む食べ物】ほとんどは普通の食事で賄える
トリプトファンは体内で作ることができないため、食事から摂取する必要があります。
しかし、ほとんどの場合は普通に食事をしていれば不足することはありません。
この章では、トリプトファンの必要量と、それを達成するためには何をどのくらい食べればよいのかを解説します。
2-1. 成人の1日必要量は体重1kgあたり4mg
トリプトファンの1日必要量は、成人の場合体重1kgあたり4mgです。
下図は、厚生労働省が示している年齢別のトリプトファン必要量です。
つまり、体重60kgの成人だと1日に240mg、体重50kgの成人だと1日に200mgが必要ということになります。
この必要量は、鮭の切り身1切れや鶏むね肉100g程度を食べれば摂取できます。
トリプトファンを必要量摂取するのはさほど難しくないということがわかっていただけたのではないでしょうか。
2-2. トリプトファンの摂取=たんぱく質の摂取
トリプトファンを摂取するためには、たんぱく質の多い食べ物を食べましょう。
トリプトファンはアミノ酸の一種であり、たんぱく質はアミノ酸でできているので、たんぱく質を摂取すれば自動的にトリプトファンも摂取できます。
たんぱく質が多い食べ物には、以下のようなものがあります。
特に魚介類にはたんぱく質が豊富で、肉類に比べると脂質が少なく消化しやすいので、効率よくトリプトファンを摂取することができます。
2-3. 1日分のトリプトファンが摂取できる食べ物の例
ここで、1日分のトリプトファンが摂取できる食べ物の例をご紹介しておきます。
以下は、体重60kgの成人の1日必要量である「トリプトファン240mg」を含む食べ物の量です。
体重によって少々増減させる必要はありますが、これだけ食べていればトリプトファンは足りているという目安にお使いください。
たとえば「ラーメン+チャーハン」など、炭水化物に偏った食事をしていると不足するかもしれませんが、おかずをいくつか食べるという食生活であれば自然とトリプトファンの必要量を摂取できるでしょう。
トリプトファンはビタミンB6・炭水化物と一緒に摂取するのが効果的
1章で述べたように、トリプトファンの効果はセロトニンが増えることによって得られます。
セロトニンを増やすためには、トリプトファン単体よりもビタミンB6・炭水化物と一緒に摂取する方が効果的です。
その理由と、これらの栄養素を一度に摂取できる食べ物について解説します。
3-1. ビタミンB6はセロトニンの合成をサポートする
ビタミンB6は、トリプトファンからセロトニンが合成されるのをサポートします。
ビタミンB6はアミノ酸の代謝に関わるビタミンで、セロトニンのような神経伝達物質が合成される過程でも、トリプトファンの代謝において補酵素(酵素の働きを助ける成分)として働くのです。
そのためビタミンB6が不足すると、セロトニンの合成がスムーズに進まなくなるというわけです。
ビタミンB6は、以下のような食べ物に多く含まれています。
- 野菜類(ブロッコリー・にんにく・ししとう・切干し大根など)
- 穀類(玄米・小麦など)
- 魚介類(くろまぐろ・さば・鮭など)
- 種実類(ピスタチオ・ごま・ピーナッツなど)
魚介類にはトリプトファンも豊富なので、トリプトファンとビタミンB6を同時に摂取できる優秀食材であることがわかります。
3-2. 炭水化物はトリプトファンの取り込みを助ける
炭水化物には、トリプトファンの脳への取り込みを助ける働きがあります。
トリプトファンが脳に運ばれる経路は、その他のアミノ酸も利用するルートであり、さまざまなアミノ酸が増えると渋滞してトリプトファンが取り込まれにくくなります。
炭水化物を摂取するとインスリンが分泌され、それを契機にトリプトファン以外のアミノ酸は筋肉に運ばれます。
そうなると、輸送経路を通りやすくなったトリプトファンが容易に脳に取り込まれるというわけです。
食事ではご飯やパンを食べたり、イモ類やくだものを添えたりすると、炭水化物を摂取することができます。
3-3. バナナを食べれば3つの成分を一度に摂取できる
バナナには、トリプトファン・ビタミンB6・炭水化物が全て含まれています。
※必要量は体重60kg・エネルギー量2000㎉の場合
バナナ1本で1日分の栄養素を賄うというわけにはいきませんが、手に入りやすく調理も不要という便利な食べ物なので、積極的に取り入れることをおすすめします。
トリプトファンの過剰摂取には注意が必要
一方で、トリプトファンは過剰摂取にも注意が必要な栄養素です。
この章では、その理由や上限量について解説します。
4-1. 1日3g以上摂取すると毒性を発揮する
トリプトファンは、1日3g以上摂取すると毒性を発揮するといわれています。
具体的には、トリプトファンを1日に3~6g摂取すると、短期間であっても無気力・吐き気・頭痛といった症状が出現したという報告があります。
トリプトファン3gは、まぐろの刺身10人前にあたります。
そのため、普通に食事をしていて過剰摂取になる心配はほとんどありませんが、サプリメントを取り入れる場合には注意が必要です。
4-2. 脳疲労の原因になるという指摘もある
また、上限量まで摂取しなかった場合でも、多量のトリプトファンは脳疲労の原因になるという指摘もあります。
脳内でトリプトファンが代謝されてできるキヌレン酸という物質が、記憶や集中を促すアセチルコリンという神経伝達物質の働きを抑制するためです。
サプリメントを利用して積極的にトリプトファンを摂取している場合に「ちょっとしたことが思い出せない」「考えがうまくまとまらない」などの脳疲労症状が見られたら、摂取量を見直してみるとよいでしょう。
4-3. サプリメントの限界値は1日あたり220mg
このような過剰摂取による悪影響を予防するために、サプリメントに配合するトリプトファンの限界値は1日あたり220mgとされています。
この限界値は、複数のサプリメントを摂取したとしても毒性を発揮する3gに達する可能性は低いだろう、という理由で設定されています。
それぞれのサプリメントにおけるトリプトファンの含有量を確認し、食事の摂取状況も考慮しながら、安全な使用量を守っていくことが大切です。
トリプトファンのサプリメントを取り入れる場合の注意点
トリプトファンを摂取するためにサプリメントを活用したいとお考えの方に向けて、注意点をお知らせしておきます。
トリプトファンのサプリメントを取り入れる場合には、以下のような点に注意しましょう。
それぞれの内容について、解説していきます。
5-1. 食事からの摂取が難しい場合に利用する
ここまで解説してきたように、トリプトファンは普通に食事をしていれば不足することはなく、過剰摂取による弊害もあります。
そのため、以下のように食事からの摂取が難しいという場合に限って、サプリメントの活用を検討した方がよいでしょう。
- 食が細いなどの理由で一般的に必要とされる量の食事を摂れない
- 食物アレルギーがありたんぱく質を摂取しにくい
5-2. 複合的な栄養素が摂れるものを選ぶ
サプリメントを利用する場合には、トリプトファンだけではなく複合的な栄養素が摂れるものを選びましょう。
なぜなら、栄養素をまんべんなく底上げした方が、期待する効果を得やすいからです。
栄養の樽理論といって、栄養素は樽のように私たちの体を支えており、どれかが足りないとそこから水漏れした状態になってしまうという考え方があります。
つまり、特定の栄養素をいくら増やしても、他に足りない栄養素があれば意味がないのです。
5-3. 複数サプリにおけるトリプトファンの含有量を確認する
既に他のサプリメントを飲んでいる場合には、含有成分としてトリプトファンが重複していないか、量はどうかを確認することも大切です。
前述したように、トリプトファンを過剰摂取すると健康障害が起こります。
「トリプトファン」という名称で販売されているものだけではなく、睡眠やリラックスを商品名にしたサプリメントにもトリプトファンが含有されていることが多いです。
知らず知らずトリプトファンを過剰摂取することを避けるために、飲んでいるサプリメントに含まれるトリプトファンの量を確認し、1日3g以上にならないようにしましょう。
5-4. 持病や内服薬がある場合には医師に相談してから始める
持病や内服薬がある場合には、サプリメントを始める前に医師に相談しましょう。
持病や内服薬の内容によっては、サプリメントの内服によって健康障害が起こる可能性があるからです。
特に、以下のような方は注意が必要です。
- 抗うつ薬を内服している(セロトニンが過剰になる)
- 肝臓の機能が低下している(肝臓の脂肪化が起こる)
トリプトファンに限らず、サプリと薬には飲み合わせの確認が必要なので、「とにかくまずは医師に相談」と心得ておくのが安心です。
セロトニンを増やす生活習慣
トリプトファンの効果が気になるという方には、セロトニンを増やしたいというニーズがあるでしょう。
そこで、トリプトファンの摂取に加えて行うと、よりセロトニンを増やすことができる生活習慣をご紹介しておきます。
セロトニンを増やすためには、以下のようなことを実践するのがおすすめです。
それぞれの内容について、解説していきます。
6-1. 朝のうちに10分程度日光浴をする
まず習慣にしたいのは、朝のうちに10分程度日光浴をすることです。
網膜が日光を感知することで、セロトニン神経が活性化し、分泌が促進されます。
セロトニンは起きている間継続して必要になるため、朝のうちに増やしておけば1日を快適なコンディションで過ごすことができます。
冬以外は曇っていても効果があり、日当たりのよい窓辺に行けるのであれば屋内でも大丈夫です。
6-2. リズミカルな運動を行う
リズミカルな運動も、セロトニン神経を活性化させて分泌を促進します。
運動といっても特別なことは必要なく、以下のようなもので十分です。
- 咀嚼(リズムよく噛む)
- 歩行(一定の速さで歩く)
- 意識的な呼吸(深呼吸や歌うなど)
継続して行うことが大切なので、取り組みやすいことを探してみましょう。
6-3. 人やペットと触れ合う
人やペットと触れ合うことも、セロトニンの増加につながります。
人やペットと触れ合うと、オキシトシンというホルモンが分泌されます。
オキシトシンには、セロトニン神経を活性化させる働きがあるのです。
家族や友人と手をつないだりペットを撫でたりといった直接的なスキンシップはもちろん、楽しくおしゃべりをしたり誰かに褒められたりといった心の満足感も、オキシトシンの分泌を促します。
6-4. 腸内環境を整える
セロトニンを増やすためには、腸内環境を整えることも大切です。
セロトニンは、腸と脳で作られます。このうち気分や自律神経を整えるのは脳で作られるセロトニンですが、腸はその原料となる5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)という物質を作って脳に供給しているのです。
また、トリプトファンと共にセロトニンの合成に欠かせないビタミンB6も、その一部は腸内細菌によって作られます。
つまり、腸内環境が整っていると、セロトニンの合成に必要な物質がスムーズに供給されるというわけです。
まとめ
この記事では、トリプトファンの効果と摂取方法について詳しく解説しました。
以下に要点をまとめます。
トリプトファンを摂取するとセロトニンが増え、以下のような効果が得られます。
トリプトファンは、以下のように摂取しましょう。
トリプトファンの過剰摂取にならないよう、食事から十分に摂取できない場合に限ってサプリメントを活用しましょう。
その場合には、複合的な栄養素が摂れるものを選ぶのがおすすめです。