女性の体は初潮から閉経を迎えるまで、長きに渡って女性ホルモンの影響により心や体に様々な症状が現れてきます。
これを東洋医学においては「血の道症」と呼び、特に大きな変化である「更年期」を迎える女性は、イライラ、不安感、頭痛、腰痛、倦怠感などたくさんの不快な症状を乗り越えていかなくてはなりません。
東洋医学では西洋医学のように、更年期を単に女性ホルモンの減少と捉えずに、あらゆる角度から自分自身の体質を検証することで、本来の自然治癒力によって克服できる体に変えて行くことを目的としています。
漢方薬店の運営もされている鍼灸師の足立美穂先生に、漢方を用いた更年期への向き合い方についてお伺いしました。
東洋医学の力で更年期の症状を改善?
まずは東洋医学での「漢方」を用いた、更年期との付き合い方についてお伺いいたします。
足立先生はどのように漢方を用いられるのですか?
足立先生「最初に問診にてお体の全体像を把握し、睡眠・食事・便やお小水の状態で大まかな体質を判断します。次に脈診にて細かな臓腑の変調をとらえます。患者様の顔色・舌を見ながら、苔や舌の色を説明し、問診でお聞きした内容と一致点を説明します」
東洋医学は、健康状態の現れとして舌を重要視し、「舌診」と言ってよく観察します。
胃腸の様子、水分代謝や血液の状態、そして精神の状態まで把握できるそうです。
また脈診に関しても、通常では片手の脈だけですが、両手を触って脈をとるのも特徴的です。
手首からわかる東洋医学においての脈診は、左右の手首の脈を心・肝・腎・肺・脾などの6箇所に分けて、その強さや差を診ます。
診療後、更年期の症状に対して漢方を用いる場合、効果を感じられるのにどのくらい時間がかかるのでしょうか。
「早い方で一週間以内に効果を感じる方がおられます。特にのぼせやホットフラッシュの症状に対する反応は早いです。一方、冷えや体の倦怠感には効果が出るのに時間を要します。両タイプとも一つの季節を通して服用されると、お身体が軽くなったと感じて頂ける方が多いかと思います」
漢方は即効性はなく効き目を実感するのに時間がかかる、などと思っていた方も多いかもしれませんが、そうではありません。
漢方だけでなく、根本的な体質の改善に関する効果は時間がかかる、というのは西洋医学でも同じです。
体質別、自分に合った漢方はどれ?
以前の記事で、足立先生には更年期対策におすすめの漢方を足立先生に教えていただきました。
それぞれの漢方について詳しく聞いてみました。
1.のぼせや発汗タイプにおすすめの漢方
双料杞菊顆粒・八仙丸・六味丸料
東洋医学では、40歳を過ぎたあたりから体の力が衰えて、さまざまな体の不調があらわれると言われています。
これを腎の気が虚した為と考えています。
東洋医学の腎は、腎臓の意味だけではなく、体の根本の力や、生殖器官、ホルモンバランスなども含まれます。
のぼせや発汗タイプは、体の力が弱っている為にほてるタイプですので、体の力を補いつつ、ほてりを抑える漢方が適しています。
六味丸料をベースに考えていただき、そこに目の症状(例:かすみ目・疲れ目・眩暈)があれば、六味丸にキクカ、クコシを加えた双料杞菊顆粒(そうりょうこぎくかりゅう)がおすすめです。
これは4歳以上から飲めるのが特徴で、子供ののぼせやほてりにも有効です。
八仙丸はのぼせ症状に、空咳があるときに適しています。
体の力が衰えてくると、体内の潤いが低下してきますので、呼吸器系に症状が出てくる場合が多分にあります。
喘息を患っておられる方で、痰がなく、空咳タイプには八仙丸がおすすめです。
2.冷えを伴うタイプにおすすめの漢方
参茸補血丸・双料参茸丸・参馬補腎丸
参茸補血丸は、人参に動物性生薬の鹿の角、鹿茸(ろくじょう)をベースにしている漢方で、体の力が衰えることで冷えてしまうタイプの方におすすめです。
双料参茸丸は、この中で一番パワーがある漢方薬です。
人参、鹿茸に冬虫夏草を加えたもので、体力を早く回復させたい方におすすめです。
参茸補血丸は、双料参茸丸を少しパワーダウンしたものと考えてください。
パワーダウンしたとはいえ、鹿茸と人参が入っていますから、しっかり体力を回復させてくれます。
参馬補腎丸は、冷えを伴う方で胃腸に不安がある方や、男性更年期の方にもおすすめです。
3.イライラ、抗うつタイプにおすすめの漢方
逍遙丸
逍遙丸は、ストレスを受けて体の流れが悪くなっている方にはおすすめです。
ストレスにより流れが悪くなることを気滞(きたい)と呼びます。
気滞は万病の元で様々な症状がでます。
イライラする、やる気が出ないなどの自律神経の症状・爪が割れやすい・髪がパサつく・肩こり、また月経痛などの血の流れに関わる症状、疲れやすい・下痢などの胃腸の症状まで幅広く有効です。
4.動悸、不眠タイプにおすすめの漢方
天王補心丹
天王補心丹は、体質虚弱な人の不眠、不安感、肩こり、息切れ、動悸に有効です。
舌の先がいつも赤い交感神経過緊張タイプにおすすめです。
足立先生からのアドバイス
女性の体は40歳を過ぎたあたりから変わっていきます。
30代前半の時と同じような生活スタイルから、ゆっくりと変えて行くことが必要な時期に差し掛かっていると自覚することが第一歩です。
睡眠・お食事など日常の基本的なことから見直してください。
特に睡眠は体の力を回復させますから7時間が理想です。
しっかり睡眠がとれると肌や髪も潤います。
特に若い時から元気で体力に自信がある方は危険です。
更年期が一気に押し寄せてくる場合があります。
40歳過ぎたら先ず「睡眠」に気をつけてください。