東洋医学から見た「一生のうち8回変わる」女性のからだと更年期の治療・・ 鍼灸師が詳しく解説

2021. 09. 02
監修:足立美穂 プロフィールを見る >

鍼灸治療院 東洋の森 院長・鍼灸師
自身の体験から東洋医学の体全体を診る医学に感銘を受け、鍼灸の道に進む。体の不調のサインに気づき、病になる前に治す施術を心がけている。 不妊施術、疼痛治療、鍼灸全般(体質改善から更年期障害の改善等)の業務を専門に行う。

(https://mbp-japan.com/kyoto/to-you-no-mori/)

女性は7の倍数の年齢で体が変わり、男性は8の倍数の年齢で体が変わる、という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

生まれてから体が出来上がり、成熟して最盛期を迎え、徐々に衰え始め、やがて老いていく、という体の節目のサイクルを表した言葉です。

これは、東洋医学の教科書である『黄帝内経素問 上古天真論編第一』という書物に記載されています。

体には節目年齢というサイクルがあり、移りゆく年代の中でどのように体が変わっていくのかという内容について、自然妊娠を目標とした治療をされている鍼灸師の足立美穂先生にお聞きしました。

 

東洋医学では女性の体の変化をこう考える

東洋医学の医学書である『黄帝内経』は、中国を統治した初の皇帝である黄帝が疑問や質問を、学者である岐伯に投げかけ、岐伯がそれに答えている、という問答方式で書かれています。

『黄帝内経素問 上古天真論編第一』の中で、黄帝は、「歳を重ねると子供ができ難くなるのは何故か」いう質問をしています。

岐伯はこの質問に応えるために、体の成長やホルモンの分泌の説明を以下のように8つのステージに分けて考えています。

1
0歳
誕生
2
7歳
腎気が盛んになり歯が生え変わり、髪が美しく艶やかになる
3
14歳
月経が規則正しく始まる
4
21歳
腎気が盛んになり女性ホルモンが充実する
5
28歳
筋骨が充実する腎気がピークを迎える
6
35歳
顔がやつれ始め髪が落ち始める、腎気が緩やかに下降し始める
7
42歳
顔はやつれて艶がなくなり髪が白くなり始める
8
49歳
月経の通り道が塞がって閉経を迎える、この頃から子供ができなくなる

 

この考えに対して黄帝はまた、このような質問を投げかけました。

「歳を取っても子供を授かる方がいるのはなぜか」

この質問に対して岐伯は、それらの方は腎気がしっかりしている方であり、男性では64歳、女性では49歳が子供ができる限界の年齢だとも答えています。

ここでの「腎気」とは、腎臓のことではなく、体の根本の力のことを意味しています。

この問答を読む中で、「腎の力」は、体の成長曲線やホルモンと深く結びついていることになります。

「腎気」が盛んであれば、体の成長も順調であり、さらにホルモンの分泌も盛んなことから、女性の一生のサイクルの中での8つのステージは山のような弧を描く曲線で、一番の最盛期が5の段階であるということがわかりますね。

 

女性のからだの不調「更年期障害」の2つのタイプ

西洋医学では一般的に45歳が更年期の始まりやすい時期と言われています。

45歳頃から卵巣の機能が衰え始め、女性ホルモンの分泌が低下し、体の不調が起こりやすくなる年代だからです。

しかし東洋医学的な考え方としての更年期は、49歳頃から始まるとされています。

理由としては腎気が衰え始めるのが49歳と考えられているためです。

そしてさらに更年期には2つのパターンがあると捉え、それぞれなりやすい症状で分けて考えています。

 

1:肝腎タイプ

このタイプに当てはまる症状としては、精神的にイライラしやすく感情の起伏が激しかったり、抑うつの状態になりやすい方が分類されます。

よく肝腎同源と呼ばれますが、肝気と腎気は互いに補い合う臓器で、イメージとしては肝気を腎気が底支えをしていると思ってください。

腎気が減少すると肝気にもダメージを及ぼし、肝気がダメージを受けるとイライラや抑うつが現れます。

このような仕組みによって精神的に不安定になりやすい症状は肝腎タイプと呼ばれています。

 

2:心腎タイプ

このタイプに当てはまる人は、動悸や不眠といった症状を持つ方が分類されます。

腎気は心が高まりすぎるのを抑える働きがあり、心は熱がこもりやすく、腎気がこれを鎮めています。

心は自律神経や循環器をイメージしてください。

腎気が減少することで心をコントロールできないため、自律神経疾患が顕著に現れるため動悸や不眠といった症状に悩まされてしまうのです。

 

鍼灸師が教える「更年期」の東洋医学の治療法

東洋医学では49歳という年齢から、腎の力が衰え始め、陰陽のバランスを保ちにくくなると考えられています。

のぼせや発汗と冷えは矛盾する症状に思えますが、腎気の不足の症状です。

陰陽どちらが不足しているかでアプローチの仕方は異なります。

ここでは、タイプ別のアプローチの仕方をご紹介します。

 

のぼせや発汗タイプ

このタイプは腎陰を補う漢方が必要となります。

手足のほてり、体のほてりにも効果を発揮します。

【のぼせや発汗タイプにおすすめの漢方】
双料杞菊顆粒、八仙丸、六味丸料

鍼灸では、局所の血流改善に大変優れていますので首肩周囲のツボの流れを良くすると良いでしょう。

 

冷えを伴うタイプ

このタイプは腎陽虚を補う漢方が必要となります。

冷えと同時に体の倦怠感、肉体疲労を感じやすいと思いますので人参と動物性生薬が配合されている漢方を服用されると元気が出てきます。

【冷えを伴うタイプにおすすめの漢方】
参茸補血丸、双料参茸丸、参馬補腎丸

※冷えのタイプにはお灸が効果的です。

体の巡りが良くなるツボ:三陰交、合谷、陽池

 

イライラ、抑うつタイプ

肝気と腎気を両方補いつつ、滞りを発散させる必要があります。

肩こりや、首こりも伴って居る場合が多いです。

【イライラ、抑うつタイプにおすすめの漢方】
逍遥丸

※鍼灸で首や肩のコリを改善すると良いでしょう。日常に運動を加えてみましょう。ハーブティーも効果的です。

 

動悸、不眠タイプ

腎気が減少し、心の抑えが効かなくなっていますので、自律神経疾患症状が出ます。

第一に睡眠をとれるように心がけましょう。

【動悸、不眠タイプにおすすめの漢方】
天王補心丹

※不眠の方も用法通りの服用をしてください。寝る前のみの服用ではなかなか効果が出ない場合がございます。

また、鍼灸で頭部の血流を良くする事で自律神経を整える事もできます。

施術後は頭や目がスッキリします。

 

まとめ

更年期は自分自身を見直す機会だと思いましょう。

35歳からの女性は、体力や腎気が下降してきます。

今までと同じペースで過ごしていると、体にとってはオーバーワークになってしまい、体のあちこちに不調を招く原因にもなりかねません。

体の変調をサインだと思って是非、見つめ直してみてください。

ですが、しんどいと思ったら、無理をせずにペースダウンしましょう。

今までの自分の生活を見直すきっかけと、前向きにとらえて乗り越えましょう。

 

参考文献:

『黄帝内径素問訳注』 医道の日本社

『黄帝内径素問』 天宇出版社

『東方栄養新書』 メディカルユーコン社

『漢方・中医学がわかる本』 宝島社

 

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