更年期は、女性特有のものと思われてきましたが、そうではありません。
男性の場合、鬱(うつ)と似たような症状なので、そばにいる妻はとても心配です。
夫の様子が以前と違う、イライラや元気のないことが多いのは、実は更年期だったことに気づかずに悩む夫婦はとても多くようです。
心理カウンセラーの小日向るり子先生に、男性の更年期についてお話を伺いました。
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男性更年期って増えているの?妻はどうやって気付けばよい?
50代から60歳を過ぎた夫婦にとって、2人の関係が年齢とともに変化するのは自然なことです。
長い時間を過ごす中で、どちらか一方が相手にストレスを感じたり、様子が不安定になることもあるでしょう。
男性の更年期の症状に悩んでいるという内容は、小日向先生の相談者で多くいらっしゃいますか?
「男性にも更年期障害があるということはまだ意外と知られていません。
そのため、男性から『自分が更年期の症状で辛い』あるいは妻から『夫の更年期障害による悩みや愚痴を聞いて欲しい』といったご相談は少ないのが現実です」
まだまだ男性にとって、自分が更年期かもと気づくことは少ないのですね。
では、夫の更年期に気づかない妻は、どのように小日向先生にご相談されるケースが多いのでしょうか?
「50代~60代前半の夫を持つ妻からは、『最近夫のイライラが激しい』『些細な喧嘩から無視が続いている』『鬱のような症状が出ている』というご相談として表現されます。
しかし、その原因が更年期障害であるとはまったく思わずに、鬱やモラハラが原因だと考えてしまっている方がほとんどです」
男性の場合は、職場や仕事がストレス要因となり、鬱のような症状が出たり、イライラが爆発しているのかも、と思ってしまいやすいのですね。
https://www.scripps.org/news_items/4437-is-male-menopause-real
更年期真っ最中。そんな 夫との付き合い方って…?
女性の場合、テレビや雑誌でも更年期について触れる機会が多くあります。
友達同士の会話でも更年期が話題になることもあり、自分にいつ症状が現れるかと気になる方も多くいるでしょう。
しかし、ご相談がほとんどないということは、男性の場合は更年期を身近に感じている方は少数派。
更年期は女性だけに起きるもので、自分には無縁と思い込んでいる方が多いようですね。
では、更年期の症状が現れている夫とは、どのように付き合っていけばよいのでしょうか。
「男性更年期障害を知らないどころか、自分が以前よりもうつうつ・イライラすることが多くなったという自覚症状がない夫も多くいます。
そのような場合は『最近のあなたは以前と違う』ということをハッキリと伝えてください。
男性更年期障害は女性よりも10歳程度年齢が高く、55~65歳くらいの年齢が該当します。
ご自分の夫がその年齢に当てはまっている場合は、男性更年期障害について言及してもよいですね。
夫のうつうつやイライラを妻が一人で抱え込まないことが大切です」
いつまでも言い出せずに我慢しているよりも、夫婦で現状をしっかりと受け止めることが大切なのですね。
夫の性格によっては「鬱」や「更年期」という言葉自体で過剰に反応してしまう方もいるので、敢えて日常会話の中でサラリと伝えるか、時間を作ってきちんと話し合うかは、夫の性格によります。
自分たち夫婦にとってどんなシチュエーションがよいか、考えてみましょう。
職場の男性が更年期。そんな時、どうやって付き合えばいい?
夫ではない身近な男性が、更年期の症状でイライラしていたり、鬱になっていることから、自分にも影響が及ぶこともあります。
例えば職場の上司や同僚、仕事先で接する機会が多い男性の場合、相手の感情に理不尽な思いをすることがあるかもしれません。
そんなときはどうしたらよいのでしょうか。
「イライラ・うつうつしている当事者にそのことを伝えるのがベストです。でもはっきり言えない間柄や雰囲気の場合も多いのが職場ですよね。
そのような場合は相手のうつうつやイライラに自分の感情を引っ張られないことが大切です。
具体的には仕事のホウレンソウ(報告・連絡・相談)だけをきっちりしたら、それ以外は一切関わらない。中途半端に愚痴に付き合ったりしないことです。
感情が不安定なことを指摘できないような関係性であれば、仕事以外は徹底的に距離を置くという割り切りが大切です」
ストレスを感じることがあると、どうしても気持ちがその部分に行ってしまいがちです。
しかし小日向先生によると、影響が最小限になるように距離を置き、気持ちを上手に切り替えることが大切なのですね。
自分の感情は流されない。そのポイントは〇〇〇〇。
夫をはじめ、身近な男性が更年期だった場合、イライラや気持ちの浮き沈みは、そばにいることでダイレクトにぶつかってきます。
特に夫の場合、自分まで何をやっても楽しくなくなり、気持ちが晴れなくなってしまうこともあるかもしれません。
そのような状況で、自分自身の気持ちをどうコントロールすればよいかを小日向先生にお聞きしました。
「他人のネガティブな感情には『伸るか反るか(のるかそるか)』です。
つまり、その感情に徹底的に寄り添うか、離れるか、をハッキリとすること。
夫婦だから、大切な人だから、といった社会的責任や何となくの感情で相手の感情に付き合うと、自分が疲弊するだけでなく、相手にも過度に依存させることになってしまいます。
これ以上は付き合えない、と思ったらキッパリと離れること。
自分自身の感情を大切にできない人は、他人のネガティブ感情に寄り添うことはできないのです」
夫婦だからという理由で、惰性で受け入れたり、自分の機嫌で離れたりする曖昧な態度が一番よくなくキッパリとした心構えが必要なのですね。
一見冷たいように感じますが、小日向先生のアドバイスによると、その方がかえって相手の気持ちに寄り添うことができるそうです。
まとめ
小日向先生のお話を伺って、夫婦でも過度に依存し合うのはお互いにとってベストではない、ということを改めて認識することができました。
自分自身を大切にすることが、相手のためになるということは、つい忘れやすい気持ちです。
大切に思う人だからこそ、相手が不安定なときは、自分自身がいつもと変わらずしっかりしていることが重要なのですね。