「更年期」は、閉経前後の10年間を指しますが、最近は、40代、50代でも若々しく美しい女性が増えているので、体内のエイジングの現実を受け止めきれず、更年期の症状を自覚した時にショックを受ける人が多いようです。
「とうとうこの時が来たのか」と涙する人さえもいますが、更年期イコール「女性として終わった」「不調」「暗く沈んだ10年間」などなどネガティブなイメージがつきまといがちですから、ショックを受けるのも当然と言えば当然。
でもこの更年期、英語では“The Change of Life”と呼ぶことをご存じでしたか?
ザ・チェンジ・オブ・ライフ。
つまり、「人生の変化」ですから、この更年期をどのように過ごすかによって、その後の人生が大きく変わるということではないかと私は捉えています。
人生100年の時代において、更年期は、人生後半戦に向けてのマイルストーン。
更年期を、あとの約50年の人生を豊かに過ごすための、自分の心と体に向き合ういい機会にしてはいかがでしょう。
更年期の不快な症状は、なんと200~300!
閉経は、全ての女性に訪れるものですが、女性ホルモンの低下と自律神経の乱れにより引き起こされる更年期の症状は個人差があり、症状の数は200~300と言われています。
代表的な症状は、
ホットフラッシュ、冷え性、肩こり、頭痛、めまい、手足のしびれ・こわばり、疲れやすい、寝つきが悪い、眠りが浅い、動悸、憂鬱感、クヨクヨ・イライラ、怒りやすい…
などがあげられますが、もともとの体質、性格、生活環境なども大きく影響するので、個人差が大きく、その程度も幅があります。
離婚、退職…その原因は、更年期にあった!?
このコラムでは、症状そのものを軽減させる方法をご紹介しながら、さまざまな症状が引き起こす二次的な問題にも着目したいと思います。
症状の発生の個人差は思いのほか大きく「更年期症状を感じることはなかった」という方もいれば、「数年間、家から出られなかった」「寝たきりになってしまった」という方もいます。
また、身体的な症状だけではなく、メンタルにも影響が及ぶことが多く、中には「イライラがつのり、夫婦喧嘩が絶えず離婚してしまった」「夫婦仲が悪くなり不倫に走った」など取返しのつかない事態になる方も。
また、更年期症状で悩んでいるのは、本人だけではなく、イライラをぶつけられる周囲の方もということもあります。
例えば、職場では八つ当たりされたり、ミスが増えたりすることで更年期に女性への対応に苦慮したり、家庭では妻の感情の起伏に振り回され、夫がうつ状態になってしまうこともあるようです。
さらにあまり知られていませんが、更年期の症状に“物忘れ”、“記憶力の低下”があります。
それまで「10分くらいでできていたことが30分かかる」ようになる、「入っていた予定を忘れる」「仕事の段取りが悪くなる」など、最悪の場合、仕事に支障をきたすことから長く勤めてきた会社を自主退職する方もいるほど。
物忘れや記憶力の低下などの症状は、ご自身が認知症を疑うことにより、さらに不安が大きくなり、悪循環に陥る方もいるようです。
時には同じ女性、医師にさえも理解されないことも
この辛さ、女性同士なら理解してもらえると思いがちですが、更年期の症状がさほど出ていない同年代の女性から、時には更年期を経験してきたであろう自分の母親から「気の持ちようよ」「心が弱いからよ」と冷たく言われてしまうなど、女性の間でも認識の違い、無理解による言動が、さらなる心的ストレスになってしまうこともあります。
また、体調不良から内科を受診しても通常の血液検査では、「異常なし」という結果になり「どこも悪くありません」「年齢のせい」と診断され、「こんなに辛いのに、医師にもわかってもらえない」と余計に精神的な負担が増してしまうケースもあるのです。
必ず終わる更年期。事前の知識と打ち明けられる人が必要
ただ、更年期の不快な症状やそれによって引き起こされる問題も、事前に知識を得ておくことで軽減、あるいは回避できることもたくさんあるのも事実。
さらに、冒頭で「更年期は、閉経前後の10年間」 と書きましたが、更年期はいつか必ず終わります。
更年期を抜けた方々は、みなさん、口々に「楽になるわよ~!」とおっしゃり、現在は何事もなかったかのように、いえ、それまで以上に楽しくアクティブに過ごされている方がほとんどです。
多少の不調が出ても、逆に「更年期なんだから仕方がない」と笑っていられるくらいに気楽にとらえた方がいいとは思いますが、心身ともに辛い時は、心療内科の医師など専門家の力を借りましょう。
筆者も更年期まっただ中の53歳。
実際に更年期を経験された方々、医師、専門家への取材を通して、みなさんが人生の後半をより健康で心豊かに過ごせる記事をお送りしていきたいと思います。