これって更年期?更年期のメカニズムと対処法を鍼灸師が解説

2021. 09. 16
監修:足立美穂 プロフィールを見る >

鍼灸治療院 東洋の森 院長・鍼灸師
自身の体験から東洋医学の体全体を診る医学に感銘を受け、鍼灸の道に進む。体の不調のサインに気づき、病になる前に治す施術を心がけている。 不妊施術、疼痛治療、鍼灸全般(体質改善から更年期障害の改善等)の業務を専門に行う。

(https://mbp-japan.com/kyoto/to-you-no-mori/)

更年期は女性なら誰しも避けられない節目。

日本人女性が閉経を迎えるのは平均して50歳で、その前後の5年間、合計10年45~55歳くらいの間が更年期にあたります。

更年期には女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)の分泌が減少するため、からだにはさまざまな変化や不調が現れます。

この不調を更年期障害といいます。

女性の宿命ともいえる更年期を上手に乗り越え、できるだけ快適に過ごすには、更年期のメカニズムや対処法を正しく理解することが必要です。

 

もしかして更年期に?更年期に現れる症状

更年期で起こる症状は人によってさまざまですが、代表的な症状としてホットフラッシュがあげられます。

ホットフラッシュとは、突然、顔がほてり、大汗が噴き出たり、のぼせたりする症状のことで、更年期を迎えた女性の多くが経験する症状です。

また、からだの冷え、のどの渇き、頭痛、疲労感や倦怠感、めまいや立ちくらみ、動悸、息切れ、肩こり、便秘など身体的な不調が現れることや、気分がイライラする、やる気が出ない、不眠といった精神的な不調が現れることもあります。

こうした症状はいつ、どこで、どのような症状が出るかはっきりとわからないため「不定愁訴」といわれます。

本来、からだの異変や症状はからだのどこかに何らかの原因や病気があって生じるものですが、更年期障害で起こる不定愁訴は、からだにはとくに異常がないにも関わらず症状が現れるのが特徴です。

 

更年期障害の原因とは?

更年期障害が起こる原因には女性ホルモンが大きく関わっています。

女性ホルモンは妊娠や出産をコントロールしたり、女性のからだを病気から守ったりする働きをしていますが、女性ホルモンの分泌は30代半ばから少しずつ減少しはじめ、更年期に入る45歳くらいになると急激に減少します。

女性ホルモンは脳の視床下部の指令によって主に卵巣から分泌されますが、更年期に入り卵巣の機能が低下して女性ホルモンの分泌量が少なくなると、視床下部から卵巣へ女性ホルモンの分泌量を促す指令が出されます。

この指令は卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体形成ホルモン(LH)と呼ばれます。

一方、卵巣では脳から女性ホルモンの分泌指令が出されても十分な女性ホルモンを分泌することができないため、視床下部からはさらに強く指令が出されます。

女性ホルモンを分泌する指令塔の役割をしている脳の視床下部は、自律神経をコントロールする部分と重なっているため、女性ホルモンの分泌を促す過剰な指令が刺激となって自律神経の働きまで乱してしまうのです。

更年期障害は「卵巣機能の低下による女性ホルモンの減少」、「視床下部から過剰に出される女性ホルモンの分泌指令」、それによって引き起こされる「自律神経の乱れ」が重なって起こるといえるのです。

 

更年期障害は治療できるもの?

更年期障害の治療法はいくつか考えられますが、不足した女性ホルモンを補充するホルモン補充療法(HRT)が広く用いられています。

そもそも更年期障害は女性ホルモンの分泌量が減少することが原因ですから、不足した女性ホルモンを補うことで症状はある程度緩和されます。

また、気分のイライラや抑うつなど精神的な症状が強い場合は、抗うつ薬や睡眠導入剤を用いたり、医師や臨床心理士によるカウンセリングが行われることがあります。

その他にも、その人の体質に合う漢方薬を使って治療する方法などがあります。

いずれにしても、更年期障害の症状があれば婦人科や心療内科などを受診して治療をはじめることが大切です。

近頃では更年期障害専門外来を設けている病院やクリニックも増えています。

更年期障害と思われる症状があるにも関わらず、更年期だから仕方がないとあきらめて我慢したり放っておいたりすることだけは避けなければいけません。

女性ホルモンが不足することで骨粗しょう症をはじめ、高血圧、脂質異常症、糖尿病、動脈硬化など生活習慣病が起こりやすくなり、場合によっては命にも関わる病気が進行する恐れもあるからです。

もし、何らかの理由で婦人科や専門外来などを受診することができない場合でも、ひとまず身近にいるかかりつけ医や薬剤師などに相談するなどして、少しでも症状を緩和する取り組みを始めることが大切です。

参考:公益社団法人日本産科婦人科学会
http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=14

 

更年期障害の対策法

更年期障害の予防や改善には食事、運動、心のケアなど生活習慣にも心掛ける必要があります。

食事は3食を規則正しく、主食・副食・副菜のバランスに気をつけて摂ることが基本です。

摂取するカロリーに気をつけ、不足しがちなビタミンやミネラル、食物繊維などを多く含む野菜や果物、海藻類などを意識して摂るようにしましょう。

また、女性ホルモンの働きを補うためにも、納豆や煮豆、豆乳など大豆製品を多く摂るよう心がけることも大切です。

さらに、40歳を過ぎる頃から、体の代謝が落ち、コレステロールや内臓脂肪がつきやすくなるため、適度な運動を心がけることも大切です。

ウォーキングやジョギング、余裕があれば水泳やスポーツジムに通うなど適度な運動を習慣づけるようにしましょう。

無理をして続かなくなるよりも、こまめに体を動かすという意識で取り組むことが大切です。

また、更年期には体の不調に悩んだり、精神的に落ち込んだりすることも多くなるので、心のケアやメンテナンスを行うことも必要です。

忙しくても趣味やストレスを解消する時間を作ることや、一人で悩まず同じような悩みを抱える人同士で交流や情報交換する機会を作ること、あるいは精神科や心療内科を気軽に受診して悩みを相談するのも良いと思います。

いっそのこと、開き直って更年期を受け入れ、その先の人生をポジティブに考える視点を持つことも必要かもしれません。

 

まとめ

更年期は女性なら誰もが避けて通ることはできません。

更年期の真っ只中にいる人も、これから更年期を迎えようとしている人も、更年期をただ嫌なもの、つらいだけのものと悲観的にとらえるばかりではなく、その先に続く長い人生を見据えて、今からできることを一つでも多く生活の中に取り入れていくことが大切です。

 

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