冷え性の原因、症状、からだへの影響や改善法など、鍼灸師が伝授します

2021. 09. 17
監修:足立美穂 プロフィールを見る >

鍼灸治療院 東洋の森 院長・鍼灸師
自身の体験から東洋医学の体全体を診る医学に感銘を受け、鍼灸の道に進む。体の不調のサインに気づき、病になる前に治す施術を心がけている。 不妊施術、疼痛治療、鍼灸全般(体質改善から更年期障害の改善等)の業務を専門に行う。

(https://mbp-japan.com/kyoto/to-you-no-mori/)

女性の大敵と言われる冷え性は、歳を重ねるごとに症状がひどくなる傾向があります。

特に40代~50代の更年期と重なると、ホルモンバランスの乱れも影響し、冷え性の症状も一層深刻になる場合があります。

冷え性で悩む女性の中には、体質だから仕方がないとあきらめている人や、改善の仕方がわからず我慢しているだけの人も多いようです。

しかし、冷え性は原因を理解し適切に対処すれば、改善できる症状です。

多くの女性が悩む冷え性について、原因や対処法などを詳しく解説します。

 

女性に多い冷え性…具体的にどんな症状なの?


人間の体温は個人差もありますが、36.5~37.5度の間で細胞や臓器、免疫力などが正常に働くようにできています。

冷え性の人の多くは平熱が36.5度以下となっていることが多く、平熱を計ることで冷え性かどうか、ある程度は判断できます。

冷え性の人は血行が悪くなるため、爪の色が変化することがあります。

正常な爪の色は淡いピンク色ですが、冷え症がひどくなると黒と紫が混ざったような暗い色になります。

爪に縦の筋が入ったり、亀裂が生じやすくなるのも冷え性の特徴です。

また、鏡の前で舌を出してみて、舌の色が全体的に赤みがかったピンク色であれば正常ですが、冷え性の人の舌の色は、紫色がかった黒っぽい色や白すぎる色に見えます。

その他にも、肌の色のくすみ、目の下のクマ、唇の色が蒼白になる、口内炎ができやすくなるなど、気になるお肌の症状も冷え性による血行不良が原因とも考えられます。

冷え性を改善することで、こうした症状を軽減、改善できるかもしれません。

 

冷えって悪いもの? 冷え性がもたらす悪影響

一口に冷え性といってもその症状はさまざまです。

手先や足先、腰など特定の部位に冷えを感じる症状のほか、体がだるい、疲れやすい、食欲不振、頭痛、めまい、不眠、月経異常(月経が重い、月経不順)、トイレが近くなる、下痢や便秘を繰り返す、肩こり、腰痛、手足のむくみ、おりものが多くなる……などさまざまな症状が引き起こされることもあります。

また、体が冷えると免疫力が低下するため、風邪をひきやすくなったり、膀胱炎や皮膚炎、じんましんなどを起こしやすくなります。

体温が1度下がると免疫力は約30%も低下します。

冷え性は他の病気を引き起こす、引き金になる恐れもあるのです。

さらに、冷え性によって肌の新陳代謝が低下するため、肌荒れや肌のカサつき、吹き出物ができやすくなるなど、お肌にとっても良いことはありません。

その他にも、基礎代謝が落ち、太りやすい体質になったり、血液やリンパの循環が悪くなり足がむくみやすくなったりします。

一見すると冷え性とは関係がないと思われる症状も、冷え性を改善することでよくなるかもしれないのです。

 

冷え性は何が原因?


冷え性の原因は大きくわけて2つあります。

一つは「熱を作る力」が低下すること。
もう一つは「熱を運ぶ力」が低下することです。

まず「熱を作る力」が低下するというのは、無理なダイエットなどで摂取カロリーが少なくなると、熱を作る材料が不足し、体温を維持しにくくなるため冷え性が起こるということ。

また、体温となる熱の約7割は筋肉で作られるため、運動不足や加齢によって筋力が低下すると、熱を作る力も同時に低下するため冷え性が起こりやすくなります。

一方、「熱を運ぶ力」が低下するというのは、低血圧などが原因で全身に血液を送る力が弱くなり、体の内部で温められた血液が末梢まで届かず冷え性が起こる、ということです。

更年期以降に起こりやすい脂質異常症や動脈硬化などで血液がドロドロの状態になると、熱を運ぶ力が低下するため冷え性が起こりやすくなります。

加えて、月経に伴う一時的な貧血も、酸素が体の隅々まで届きにくくなり冷え性が起こる原因となります。

こうしたさまざまな要因を改善し、「熱を作る力」や「熱を運ぶ力」を回復させることが、冷え性の改善にとって不可欠なのです。

 

冷え性の対策法

冷え性を改善するには、食生活の改善が基本です。

体を温める食べ物をできるだけ多く摂り、体を冷やす食べ物は控えなければいけません。

人参、かぼちゃ、レンコン、タマネギ、里芋など冬に採れる根菜類や、紅鮭やヒラメ・鯛・ふぐ・ナマズ・ホタテ、昆布などの魚介類には体を温める効果が高い食材が多いです。

また、納豆や味噌など大豆製品には体を温める効果とともに女性ホルモン(エストロゲン)に似た働きがあるため、更年期世代の女性にとっては一石二鳥です。

その他にもニンニクやショウガ、唐辛子、ゴマなどの薬味を組み合わせたり、ホルモンバランスを調整するビタミンEを多く含むアーモンドやクルミ、カシューナッツなどナッツ類を一緒に摂ると、体を温める効果がさらに高まります。

カフェインは体を冷やすのでコーヒーや緑茶よりも、番茶やウーロン茶を飲むようにしましょう。

また、運動不足になると熱の産生が低下するので、適度な運動を心掛けることも必要です。

お風呂はシャワーだけで済まさず、肩までゆっくり浸かるようにしましょう。

半身浴や足湯も血行が良くなり冷え性の改善に効果的です。

その他にも、きつめのブラジャーや補正下着など体を締めつける下着はできるだけ着用せず、リラックスした服装を心掛けましょう。

忙しくても趣味や息抜きの時間を作り、こまめにストレスを解消することも必要です。

 

まとめ

これまで、「冷え性」は体質によるものと考えられることが多く、治す努力や治療をあきらめる人が多かったのですが、「冷え症」という一つの病気として考えることで、症状の改善や病気の予防につながります。

食事、運動、生活習慣を見直すことなど、できる対策を一つずつでも増やしていく心構えが大切です。

 

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