東洋医学の力で更年期の症状を改善 体質別タイプ別自分にあった漢方は? 鍼灸師が教えます

2021. 09. 08
監修:足立美穂 プロフィールを見る >

鍼灸治療院 東洋の森 院長・鍼灸師
自身の体験から東洋医学の体全体を診る医学に感銘を受け、鍼灸の道に進む。体の不調のサインに気づき、病になる前に治す施術を心がけている。 不妊施術、疼痛治療、鍼灸全般(体質改善から更年期障害の改善等)の業務を専門に行う。

(https://mbp-japan.com/kyoto/to-you-no-mori/)

ほてり、のぼせ、イライラ、冷えなど、更年期障害に悩む女性の体調はとてもゆらぎやすいのが特徴です。

症状に対処する薬とは異なり、漢方は体全体の状態を広くとらえ、体質に合った処方をするので、一つの症状だけなく体全体の不調を改善することを目指すことができます。

鍼灸師の足立美穂先生に、症状ごとの分類の仕方、タイプ別に合った漢方薬を教えていただきました。

 

更年期ってどうやって起こるの?

「女性の更年期障害は、女性ホルモンのバランスの乱れが主な原因です。

女性ホルモンとは一般的に、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの2つを指します。

月経から次の月経までの間、この2つのホルモンは一定して分泌され、その分泌を司っている器官は、脳と卵巣になります。

この2つのホルモンは女性らしい体を作り、精神を安定させる働きがあり、2つのホルモンのバランスが整っていると、規則的に月経が起こります。

しかし、40代から少しずつホルモンのバランスは崩れ始め、やがて50歳前後になると多くの女性が閉経を迎えます。

その頃になると、ホルモンの乱れに伴って、体や精神に様々な不調が現れます。

これを更年期障害と呼んでいます」

 

人によって違う更年期症状。タイプ別に分類!

東洋医学の立場から見て、更年期障害が軽いか重いのどちらになるかは、その人の体の生命エネルギー(腎の力)が一番深く関わっていると考えられているそうです。

足立先生に、各タイプ別に見た更年期障害の症状を教えていただきました。

 

タイプ1:「腎の力が低下」しているタイプ

「腎」とは、西洋医学の「腎臓」だけの意味でなく、東洋医学の場合は生命を維持するエネルギー源を意味します。

腎の力が低下している時の症状として、手足の冷え、手足や顔のほてり、冷えのぼせがあげられます。

さらに細かく見ていくと「腎陽の力」といって、腎が体を温める力が低下すると、手足の冷えといった症状が現れます。

反対に「腎陰の力」といって、腎が体を潤す力が低下した時は、のぼせてしまいます。

この両方が不足してしまうと、冷えのぼせといった症状が起こるのです。

 

タイプ2:「心の乱れ」のタイプ

このタイプは、元々は腎の力が低下したことから、やがて「心」のコントロールが効かなくなってしまい、自律神経が乱れてしまっている状態です。

不眠や動悸、といった症状が主に現れます。

 

タイプ3:「肝の乱れ」のタイプ

このタイプの主な症状は、精神的なイライラです。

東洋医学では、肝は血を蔵している場所と捉え、不調が起こると爪がもろくなる、髪が抜けやすくなる、などの症状がみられます。

足立先生に教えていただいた3つのタイプですが、自分の症状がどのタイプに分類されるか、

当てはめて考えてみましょう。

 

【タイプ別】更年期の女性にオススメの漢方薬

タイプ1:「腎の力が低下」しているタイプ

・手足が冷える場合…動物性生薬によって体力を回復させていく漢方である、参馬補腎丸(じんまほじんがん)がお勧めです。

・のぼせる場合…体を潤す効果のある漢方である、六味丸(ろくみがん)麦味参顆粒(ばくみさんかりゅう)がお勧めです。

 

タイプ2:「心の乱れ」のタイプ

このタイプの方は、まずしっかりと睡眠を取ることが大切です。

お勧めの漢方は、心脾顆粒(しんぴかりゅう)です。

服用する時は冷水でなく、温水で飲むようにしましょう。

 

タイプ3:「肝の乱れ」のタイプ

このタイプの方は、養血+肝の気を発散させる、といった効果のある婦宝当帰膠(ふほうときこう)逍遥丸(しょうようがん)を合わせたものがお勧めです。

 

自宅でできるセルフケアで、更年期対策にチャレンジしよう!

足立先生によると、更年期の女性は、腎の力が低下していることがとても多いそうです。

腎の力を回復させるためには、しっかりと睡眠をとることが、とても大切とのことです。

また、具体的に更年期の女性に向けて、症状を抑えるための簡単なセルフケアをお伺いしたところ、家庭でも簡単にできる「ツボ温灸」を教えてくださいました。

ツボ温灸とは、足立先生によって考えられたツボ押し+温灸を組み合わせた造語です。

まずは、ツボを温める「ツボ温灸セット」を用意します。

オーガニックコットンを10センチ角に袋状になるように縫います。

その中に6分目まで乾燥小豆をいれ、電子レンジで1分温めるだけ。とても簡単に自作することができます。

ポイントはオーガニックコットンを使用すること、レンジの時間は小豆が割れないよう、30秒ほど温めたら、10秒ごとに確認して、じんわりと温かい程度に温めることです。

足立先生おすすめのツボ温灸セットの準備ができたら、いよいよツボを温めていきます。

「腎の力が低下」しているタイプの方は、三陰交・復溜・関元の3つのツボを温めましょう。

「心の乱れ」のタイプの方は、三陰交・復溜・内関といったツボ、「肝の乱れ」のタイプの方は、三陰交・復溜・太衝のツボを温めることがおすすめです。

じんわりと温かさを感じる程度に温めた、ツボ温灸をそれぞれの場所に置き、10分ほどを目安に温めていきましょう。

最後に、ここでご紹介したツボの位置を確認しておきましょう。

三陰交
内側のくるぶしから、指4本分の幅を上に行ったところ。
復溜
内側のくるぶしから、アキレス腱の方向に指幅2本分、横に行ったところ。
関元
おへそから指幅4本分を下がったところ。
内関
手のひらと手首の境目から、指幅3本分を下がったところ。
太衝
足の親ゆびの爪を、人差し指側の際の位置から真っ直ぐに下がったところ。
人差し指の骨とぶつかる箇所で、ちょうど指が止まる位置にあるあるツボです。

 

ツボ温灸セットは、一度使用したら半日以上空ければ、繰り返し使用できます。

小豆が割れてきた時を寿命とし、新しいものに作り変えましょう。

 

まとめ

漢方は、以前よりもグッと身近な存在になり、相談できる漢方医もたくさん増えてきました。

つらく長い更年期を、上手に乗り越えるための賢い選択肢の一つと言えるでしょう。

体調の改善をはっきりと実感している声も多い治療法なので、専門家のアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。

 

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