PMS(Permenstrual Symndrome)は、生理直前から10日前までの黄体期に体や心に起こりやすく、生理が始まると緩和されたり、感じなくなることがほとんどです。
症状はそれぞれ個人差があり、食欲が増す、何となくだるいなどの軽めの症状もあれば、ベッドから起き上がれないほどの重い不調を抱えてしまうなど、さまざまです。
今回は、東洋医学のスペシャリスト、鍼灸師の足立美穂先生にPMSのつらい症状をどのように改善したらよいか、お話しをお伺いしました。
PMSの症状はどんなものがあるの?
始めに、東洋医学の観点では、PMSの症状はどのようなものがあげられるかをお伺いしました。
足立先生:
「東洋医学では、体の巡りの鬱滞がある方がPMSになりやすいと考えています。
鬱滞(うったい)とは、血流や体液などがスムーズに流れずに滞留している状態をいいます。
主な症状としては、以下の4つがあげられます。」
1: | イライラ・抑鬱などの精神的な症状 |
2: | 頭痛、胸が張る・乳首が痛い・下腹部が重たい・肩こりなどの疼痛症状 |
3: | 下痢、胃もたれなどの症状 |
4: | めまい |
西洋医学はそれぞれの症状に対して、対処するための薬を処方するのが一般的です。
東洋医学の観点では、体を全体的にとらえた上で、このような症状に分類されるようです。さらに、この症状が体質別によってどのように現れるか、その原因などを教えていただきたいと思います。
タイプ別!PMSの際に気をつけたい症状
東洋医学においてPMS(生理前症候群)が起こるのは、どのような仕組みがあるのか教えてください。また、どのような生活スタイルや体質の人が症状を重く感じやすいのでしょうか?
足立先生:
体の巡りが鬱滞する原因は、大きく分けて下記の2つのタイプ別に分類されます。
タイプ別に現れる症状や、月経が始まってから現れてくる症状に違いがあるので、簡単にご説明しましょう。
①胃腸虚弱タイプ
症状 | 下痢、胃もたれ、めまいなど |
体質 | 普段から胃腸が弱い、脂っこいものを食べると下痢をしやすい、あまり自覚はないが便が緩めなど
このような方は、胃腸が弱く、体を巡らせる力が低下しているために、鬱滞しやすくなっています。胃腸が弱くなると水分代謝が悪くなるため、めまいが起こりやすいと考えられています。 |
月経期に出る症状 | 月経がだらだら続く、不正出血疲れやすい、微熱、月経の色が薄いなど。 |
②肝気鬱滞タイプ
症状 | イライラ、抗鬱などの精神的症状や、胸のハリ、乳首が痛い、下腹部が重たい、肩こりなどの疼痛症状など |
体質 | 普段からストレスが多いタイプ
肝の気とは気の流れをスムーズにしたり、伸びやかにする働きがあります。このため気が滞った状態で高温期になると鬱滞が起こり、熱を持つために疼痛症状が現れます。 |
月経期に出る症状 | 月経量が多い、塊がある、色が茶褐色または暗紅色、月経痛など |
PMSの改善が見込める漢方はこれ!
具体的に漢方を使ったPMS(生理前症候群)の改善方法を、足立先生にお伺いしました。
①胃腸虚弱タイプにおすすめの漢方
このタイプの方は、体の力をつける補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、補中丸(ほちゅうがん )、健脾散顆粒(けんぴさんかりゅう )、健胃顆粒(けんいかりゅう)などの漢方をメインにするのが良いでしょう。
さらに水分代謝が悪い方の場合は、勝湿顆粒(しょうしつかりゅう)や五苓散(ごれいさん)を加えることがおすすめです。
②肝気鬱滞タイプにおすすめの漢方
このタイプの方は、肝気の流れを良くする加味逍遥散(かみしょうようさん)、逍遥丸(しょうようがん)、酸棗仁湯(さんそうにんとう)、冠元顆粒(かんげんかりゅう)などの漢方が良いでしょう。
さらに血を補う働きのある婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)を加えると、活血と補血の作用によって、PMSを改善できるでしょう。
PMSの緩和のために試したいセルフケア
漢方以外の方法で、PMS(生理前症候群)を緩和するための方法があれば教えてください。
例えば足立先生の専門である鍼灸での緩和や、生活習慣の中で気をつけるべきポイントなどはありますか?
足立先生:
ツボ温灸などで、温めるのがおすすめです。タイプ別で選ぶツボが変わってきます。
①胃腸虚弱タイプ
合谷(ごうこく)、関元(かんげん)、三陰交(さんいんこう)のツボを選びましょう。
気をつける生活習慣としては、冷飲、脂っこいもの、甘いものは控えるように気をつけましょう。
②肝気鬱滞タイプ
関元、三陰交、太衝(たいしょう)のツボを選びましょう。
気をつける生活習慣としては、ストレスを溜め込みすぎない、軽度な運動を心掛けましょう。
アルコールは体に熱をこもらせる性質があるので、控えることをおすすめします。
ツボ温灸は、最低でも2日に1回はすることが効果的です。
症状が出てからしたのでは、効果が半減します。
症状がない間から、しっかりと行うことが大切です。
まとめ
西洋医学では、それぞれの症状を抑える薬を処方されますが、漢方の場合は体質から改善していきます。
つらい症状が現れない体を作るためには、自分の体にあった漢方を知ることから始めてみましょう。
漢方は、改善されるまで時間が長いイメージですが、実際に始めるとすぐに体に変化が現れ、PMSが楽になったという意見もよく聞きます。
そのためには、しっかりと専門医のアドバイスを受けることをおすすめします。
自分の体をよく知った上で、普段の生活の中でも自分に合った習慣を心がけることが大切ですね。