ビタミンDは「骨を作るビタミン」というイメージが強いですよね。
たしかに、日本では「ビタミンDはカルシウムの吸収を促進して、骨を健康に保つ栄養素」として広く知られています。
しかし、ビタミンDは、海外では全身の細胞に大きな影響を与えるオールマイティーな栄養素として注目を集めています。
近年の研究によって、ビタミンDにはさまざまな症状の改善や病気の予防効果があると分かってきたからです。
実はすごいパワーを持つビタミンDですが、日本人の80%が不足しているとも言われています。
これは、あまりにもったいないことですよね。
そこでこの記事では、ビタミンDの効果や摂取方法などを詳しく解説します。
最後までお読みいただくと、ビタミンDの重要性が分かるだけでなく、どれくらい摂取すればいいのかが理解できます。
毎日を楽しむためには、体の中から健康になりたいものです。
あなたの健康を維持するためにも、ぜひ本記事を最後までご覧ください。
目次
ビタミンDで期待できる8つの効果
ビタミンDは、カルシウムやリンなどのミネラルの代謝を促進して、骨の形成に関わる脂溶性のビタミンです。
ビタミンDはD2からD7まで6種類ありますが、通常ビタミンDといえばD2(エルゴカルシフェロール)とD3(コレカルシフェロール)を指し、どちらも体内では同じような働きをします。
まずは、ビタミンDを摂取することで期待できる効果を見ていきましょう。
1-1.骨の強化
1つめの効果は「骨の強化」です。
「ビタミンⅮが骨を強くする」と聞いたことがある人も多いでしょう。
これは、ビタミンDが骨の材料であるカルシウムやリンに与える、次の2つの働きによるものと考えられています。
骨は、骨代謝によって新しく作られ続けるものです。
ビタミンDは体内でカルシウムの吸収を助け、血液中のカルシウムを骨まで運ぶことで、骨の形成を助けます。
骨粗しょう症の治療薬として用いられるのも、この効果によるものです。
1-2.風邪やインフルエンザなどの予防
2つめの効果は「風邪やインフルエンザなどの予防」です。
なぜなら、ビタミンDには免疫力を高める効果があるからです。
上記2つの働きにより、ウイルスが体内に侵入するのを防ぐため、風邪やインフルエンザなどにかかりにくくなるのです。
ビタミンDと免疫については、さまざまな研究でその有用性が明らかになっています。
出典:ビタミンD と日光が健康に及ぼす有益な影響:D-bate | Nature Reviews Endocrinology
このように、ビタミンDで免疫力を高めると、風邪やインフルエンザなどの感染症予防になります。
参考:満尾正『医者が教える「最高の栄養」ビタミンDが病気にならない体をつくる』,KADOKAWA,2020年,P85-87,P135-145
1-3.花粉症・アレルギー疾患の改善
3つめの効果は「花粉症・アレルギー疾患の改善」です。
ビタミンDには、免疫システムをコントロールする働きがあり、免疫細胞を正常化します。
そもそも、アレルギー疾患は、本来無害な物質を異物(アレルゲン)と判断して、免疫システムが攻撃することによって起こる症状です。
ビタミンDの働きにより、免疫システムが正常化されるため、アレルギー反応による免疫細胞の暴走(アレルゲンへの過剰反応)を防ぐことができるのです。
花粉症・アレルギー対策として、ビタミンDのサプリメントの活用を医師がすすめるのは、このためです。
参考:満尾正『医者が教える「最高の栄養」ビタミンDが病気にならない体をつくる』,KADOKAWA,2020年,P85-87
1-4.糖尿病の予防
4つめの効果は「糖尿病の予防」です。
ビタミンDが持つ「抗炎症作用」が糖尿病の予防につながると考えられています。
抗炎症作用とは、その名のとおり、炎症を抑える作用のことです。
糖尿病には複数の原因が考えられますが、体内での慢性的な炎症も、ひとつの要因と考えられています。
そのため、慢性的な炎症を防ぐことが、糖尿病の予防に大きな意味を持つのです。
厚生労働省の研究班「多目的コホート研究(JPHC研究)」によると、ビタミンDを多く摂取している人は2型糖尿病の発症リスクが低減する可能性があると発表しています。
ビタミンDを多く摂取している人でカルシウム摂取量が多いと、2型糖尿病の発症リスクが、男性で38%、女性で41%減少するといいます。
アメリカの研究でも、血中ビタミン濃度が高いグループは低いグループに比べて、糖尿病発症リスクが43%低いということが分かっていることから、予防効果が期待されています。
1-5.がん・心臓病・脳卒中のリスクを下げる
5つめの効果は「がん・心臓病・脳卒中のリスクを下げる」です。
これは前述したビタミンDの「免疫力を高める効果」や「抗炎症作用」の影響によるものと考えられています。
厚生労働省の研究班「多目的コホート研究(JPHC研究)」では、ビタミンDが持つ次の2つの作用により、がんを予防する効果を指摘しています。
同研究所の血中ビタミンD濃度とがん罹患リスクの関連を調べた研究でも、血中ビタミンD濃度が上昇すると、がんに罹患するリスクを下げることが明らかになっており、がん予防効果が期待できます。
また、ビタミンDには、一酸化窒素の生産を促す効果があり、動脈を柔らかくする作用があります。
血管を健康に保つことから動脈硬化になりにくく、心臓病や脳卒中のリスクを下げると考えられています。
参考:血中ビタミンD濃度とがん罹患リスクについて | 現在までの成果 | 多目的コホート研究
1-6.季節性うつの予防・改善
6つめの効果は「季節性うつの予防・改善」です。
季節性うつとは、日照時間が減る秋から冬にかけて発症する、限定的なうつ症状です。
ビタミンDは日光を浴びることで作られるため、日照時間が減るとビタミンDが不足しやすくなります。
ビタミンDにはセロトニンを正常に分泌させる働きがあり、セロトニンが不足すると、気分が落ち込んだり、意欲が低下したりなど心のバランスが崩れやすくなるのです。
この季節性うつは、ビタミンDを摂取することで予防・改善できるとされています。
1-7.妊娠しやすい体づくり
7つ目の効果は「妊娠しやすい体づくり」です。
ビタミンDは受精卵の子宮内への着床やその後の妊娠の維持など、生殖機能の大切な役割を担っています。
これは、2019年にイギリスで発表された研究論文でも実証されています。
体外受精や顕微授精など生殖補助医療(ART)とビタミンDの関連を調査したところ、以下の結果が出ました。
出典:Vitamin D and assisted reproductive treatment outcome: a prospective cohort studyより筆者作成
ご覧のとおり、着床率、妊娠率、出産率すべてビタミンD充足群が最も高い結果となりました。
またビタミンDは男性の妊活にも、大きな影響を与えるという報告もあります。
参考:男性の妊活とビタミンD – 不妊治療クリニックスタッフブログ|桜十字ウィメンズクリニック渋谷
Vitamin D treatment improves levels of sexual hormones, metabolic parameters and erectile function in middle-aged vitamin D deficient men
このため、ビタミンDは妊活を意識する男性も積極的に摂るべき栄養素と言えるでしょう。
参考:ビタミン D と生殖機能 Vitamin D and Reproductive Functions
1-8.肌荒れ・ニキビの予防や改善
8つめの効果は「肌荒れ・ニキビの予防や改善」です。
ビタミンDが持つ「抗炎症作用」は、体内の細胞だけでなく、肌にも効果を発揮します。
抗炎症作用が働くと、肌荒れやニキビができるのを防ぎます。
また、ビタミンDは紫外線や細菌などから肌を守る「抗菌ペプチド」を促す効果があります。
抗菌ペプチドは、肌に悪影響を与える菌の侵入を防ぎ、美しく健康な肌を作るサポートをしてくれます。
参考:ビタミンDの補給でニキビを治す | 名古屋市昭和区の美容皮膚科
満尾正『医者が教える「最高の栄養」 ビタミンDが病気にならない体をつくる』,KADOKAWA,2020年,P85-87,P135-145
ビタミンDは筋肉増強効果も示唆されている!
ビタミンDに筋肉増強効果を期待している人も少なくないでしょう。
実際に、ボディビルダーでアスレティックトレーナーの山本義徳氏や甘木大川整形外科の大川孝院長は、筋肉を作る栄養素として、ビタミンDの摂取を推奨しています。
たしかに、ビタミンDはカルシウムの吸収率を上げることで、骨を強くし、筋肉の合成を促すことが示唆されています。
しかし、現状ではビタミンDに筋肉増強効果があるとは、言い切れない側面もあります。
なぜなら、現状報告されている研究はサルコペニア(加齢による筋肉量の低下・減少)を対象にしているものが多いためです。
筋肉を増やすためには、タンパク質と運動に加えて、ビタミンD不足にならないことも重要と考えられるでしょう。
約80%の人がビタミンD不足!ビタミンDが不足する原因と摂取すべき人
冒頭でもお伝えしたように、ビタミンDは8つもの効果があるにもかかわらず、日本人の約80%で不足しているとされています。
参考:満尾正『医者が教える「最高の栄養」ビタミンDが病気にならない体をつくる』,KADOKAWA,2020年,P18-19
Profiles of vitamin D insufficiency and deficiency in Japanese men and women: association with biological, environmental, and nutritional factors and coexisting disorders: the ROAD stud
なぜビタミンDが不足しているのでしょうか。
ここでは、ビタミンDが不足する原因と積極的に摂るべき人を解説します。
3-1.原因①紫外線を避けている
ビタミンDは日光を浴びることで作られるビタミンなので、紫外線を避けている人は不足しやすくなります。
外出が少ない人はもちろん、外出しても日焼け止めを使っていると、ビタミンDは体内で作られません。
3-2.原因②魚を食べない
ビタミンDは魚に多く含まれる栄養素です。
詳しくは後述しますが、ビタミンDが含まれる食物は限定的なため、魚を食べる頻度が少ない人は、ビタミンDが慢性的に不足しやすくなります。
3-3.ビタミンDを摂取すべき人
以下に該当する人はビタミンD不足になりやすい傾向にあります。
ビタミンDを積極的に摂取することをおすすめします。
上記の中でも特に、妊娠中の人は医師に相談の上で、ビタミンDを摂るように心がけましょう。
妊娠中に母体の血中ビタミン濃度が低いと、乳児のビタミンD欠乏を招くからです。
母体の血中ビタミン濃度が減少した結果、胎児のビタミンD欠乏につながり、以下のリスクが高まるという報告があります。
また、高齢になると同じ時間紫外線を浴びても、充分なビタミンDを作ることができなくなることも分かってきています。
ビタミンDが欠乏すると、骨粗しょう症のリスクが高まるので注意が必要です。
そのため高齢者は食事やサプリメントでの摂取を検討するといいでしょう。
参考:吉川敏一『ビタミン・ミネラルの本』,つちや書店,2017年,P100-101
どれくらい摂ればいい?ビタミンDの摂取状況と摂取目安
ビタミンDは不足しやすいことが分かりましたが、具体的にどれくらいの摂取量が必要なのでしょうか。
ここでは、ビタミンDの摂取状況と摂取量について解説していきます。
4-1.ビタミンDの摂取量の目安
ビタミンDの1日の摂取量は、食事摂取基準などから把握することができます。
厚生労働省が定めるビタミンDの食事摂取基準は以下のとおりです。
しかし、米国食品栄養委員会(米国の専門家グループ)による平均推奨摂取量は以下のとおりです。
参考:厚生労働省eJIM | ビタミンD | サプリメント・ビタミン・ミネラル | 一般の方へより筆者作成
厚生労働省が定めるビタミンDの食事摂取基準と比較すると、2倍近くの差があります。
医師の満尾正先生によると、厚生労働省の数値は必要量でも推奨量でもなく、あくまで 食事による摂取の目安に過ぎないとしています。
満尾正先生は1日当たり25〜50㎍(1000〜2000IU)の摂取を推奨しています。
参考:満尾正『医者が教える「最高の栄養」ビタミンDが病気にならない体をつくる』,KADOKAWA,2020年,,P129-130
4-2.ビタミンDの摂取状況
どれくらい摂取しているかは、摂取した栄養や生活習慣などの状況を調査した「国民栄養・健康調査」のデータで分かります。
令和元年のデータより、ビタミンDの1日当たりの平均摂取量を以下の表にまとめました。
男女ともほぼすべての年齢で、食事摂取基準値を下回っていることが分かります。
特に、20〜40代の女性の摂取量の少なさが、目立ちます。
これは、この年代の女性が徹底的に紫外線をカットしていることが原因と考えられます。
ビタミンDを摂取する方法は3つ
ビタミンDの効果が分かったら、どのように摂取するのか気になりますよね。
ビタミンDを摂取する方法は3つあります。
順番に見ていきましょう。
5-1.日光を浴びる
ビタミンDは日光(紫外線)を浴びることによって体内で作られます。
医師の満尾正先生は、充分な血中ビタミン濃度を維持する目安として、「夏場であれば半袖・半ズボンで週3日15〜30分程度の日光浴」を挙げています。
参考:満尾正『医者が教える「最高の栄養」ビタミンDが病気にならない体をつくる』,KADOKAWA,2020年,P113-114
また、「日本人の食事摂取基準」策定検討会では、5.5㎍のビタミンD量を作るために必要な日照時間を下記としています。
ただし、住んでいる地域や天気などによって、日光浴に必要な時間は異なります。
ビタミンD生成に必要な紫外線照射時間を知るには、国立環境研究所地球環境センターのウェブサイトが便利です。
以下のモバイル版は、その場でどれくらいの時間、日光浴をすればよいのかがリアルタイムで分かるので活用するといいでしょう。
・ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報モバイル版|国立研究開発法人 国立環境研究所 地球環境研究センター
5-2.食事
ビタミンDは食事から摂ることができます。
ビタミンDを多く含む食品は以下のとおりです。
ビタミンDは、魚やきのこなどに多く含まれます。しかし、ビタミンDが含まれる食物は限定的です。
そのため、魚が苦手だったり、偏食だったりすると、食品からビタミンDを摂ることは難しくなります。
食品から効率よくビタミンDを摂取する方法については、後ほど詳しくご紹介します。
5-3.サプリメント
ビタミンDはサプリメントで摂取することができます。
ビタミンDのサプリメントは、ビタミンD2とビタミンD3の2種類があります。
体内での働きはどちらも変わらないとされていますが、満尾正先生はサプリメントで摂る場合はD3の方が効率的としています。
その理由は下記のとおりです。
参考:満尾正『医者が教える「最高の栄養」 ビタミンDが病気にならない体をつくる』,KADOKAWA,2020年,P230-121
また、ビタミンDの単位はIU(国際単位の略)と㎍(マイクログラム)が使われます。
1日のビタミンD摂取量の上限は、4000IU(100㎍)です。
海外製のサプリメントの中には、高濃度のものもありますから、気をつけて選びましょう。
ビタミンDを効率的に摂取するポイント3つ
不足しがちなビタミンDを効率的に摂取するには、次の3つの方法がおすすめです。
順番に確認していきましょう。
6-1.油と一緒に摂る
ビタミンDは脂溶性ビタミンのため、油と一緒に摂取するのがおすすめです。
炒め物や揚げ物などにして調理したり、ドレッシングで和えたりすることで、吸収率がアップします。
6-2.サプリメントは朝に飲用する
ビタミンDのサプリメントは、朝に飲用しましょう。
なぜならビタミンDの血中ビタミン濃度は、日光によって上昇するからです。
そのため、サプリメントは朝に飲用し、日中の血中ビタミン濃度を上げることが理想です。
ビタミンDは脂溶性ビタミンなので、朝に飲用するのが難しい場合は、食後すぐに摂取するといいでしょう。
参考:満尾正『医者が教える「最高の栄養」 ビタミンDが病気にならない体をつくる』,KADOKAWA,2020年,P162
6-3.カルシウムやビタミンKと一緒に摂る
ビタミンDの効果を最大限活用するには、カルシウムやビタミンKと一緒に摂るようにしましょう。
骨づくりに重要となる3つの栄養素を同時に摂ることで、相乗効果が期待できるからです。
骨を丈夫にするためには、ビタミンDだけでなく、カルシウムとビタミンKを摂ることが大切です。
カルシウムの効果については、以下で詳しく解説していますので、参考にしてください。
ビタミンDの過剰摂取は高カルシウム血症を招く可能性がある!
不足しがちなビタミンDですが、サプリメントの使用を誤ると過剰摂取になることもあります。
ビタミンDの過剰摂取による健康被害として確認されているのは、「高カルシウム血症」です。
高カルシウム血症が起こると、以下のような症状があります。
ビタミンDの過剰摂取により、カルシウムの血中濃度が大きく上昇すると、心臓や血管、腎臓に障害が起こる可能性があります。
ビタミンDの過剰摂取は、食事や日光からの摂取では起こりません。
またサプリメントの過剰摂取の中でも、ごく稀に起こる症状です。
サプリメントは摂取量の上限を超えないように気をつけましょう。
まとめ
ビタミンDは主に8つの効果が期待できます。
ビタミンDは全身の細胞に大きな影響を与えることから、医師の満尾正先生は「最高の栄養」と表現しています。
ビタミンDは紫外線のほか、魚やきのこなどの食物から摂取できます。
ただし、日本人の約80%がビタミンD不足という指摘もあることから注意が必要です。
ビタミンDはさまざまな症状の改善・予防効果が期待される栄養素です。
食事やサプリメントなどで上手に摂り入れて、健康の維持に役立てましょう。