亜鉛に期待できる7つの効果と摂取方法について専門家が詳しく解説

2023. 04. 10
監修:望月みどり プロフィールを見る >

漢方養生指導士・サプリメントアドバイザー・健康管理士
女性の健康に関する専門性の高い記事を数多く執筆。 漢方養生指導士、サプリメントアドバイザーの知識を活かし、女性向けサプリメントの開発にも携わる

「亜鉛は髪の毛や肌に効果があるって本当?」
「亜鉛を飲むとどのような効果があるの?」

健康管理や美容に効果があると耳にすることが多い「亜鉛」。いざ亜鉛を摂取しようか考えたときに、実際にはどのような効果があるのか気になりますよね。

亜鉛には、主に下記の7つの効果があると言われています。

亜鉛の効果
髪の毛や皮膚を健康的に保つ
免疫力の向上
味覚を保つ
ビタミンAの合成や代謝のサポート
生殖機能の維持
うつ病の予防が期待できる
骨粗しょう症の予防が期待できる

上記のように、髪の毛や肌、味覚の維持や健康維持などさまざまな効果があると考えられています。

亜鉛は過不足により体調不良を引き起こす可能性があるため、効果を正しく理解して適切に摂取することが欠かせません。

そこでこの記事では、亜鉛の7つの効果や亜鉛の効果を高める摂取方法を解説していきます。

【この記事を読むと分かること】

  • 亜鉛の7つの効果
  • 亜鉛の効果を感じるための適切な摂取量
  • 亜鉛が不足したときに起こりやすい症状
  • 積極的に亜鉛をとるべき人
  • 亜鉛を効果的に摂取するための3つのポイント

この記事を最後まで読めば亜鉛の効果を理解でき、効果的に亜鉛を摂取できるようになります。

亜鉛は幅広い悩みにアプローチできるミネラルなので、ぜひ参考にしてみてください。

亜鉛の7つの効果

亜鉛は、人間の体に必要不可欠なミネラルの1つです。亜鉛は、主に下記の7つの効果があると言われています。

亜鉛の7つの効果
1 髪の毛や皮膚を健康的に保つ
2 免疫力の低下を抑える
3 味覚を保つ
4 ビタミンAの合成・代謝のサポート
5 生殖機能の維持
6 うつ病の予防が期待できる
7 骨粗しょう症の予防が期待できる

美容や健康にいいと言われている亜鉛には具体的にどのような効果があるのか、1つずつチェックしてみましょう。

1-1.髪の毛や皮膚を健康的に保つ

亜鉛には、髪の毛や皮膚を健康に保つ効果があります。

  • 皮膚が生まれ変わるサイクルを健康的に保つ
  • 髪の生成に必要なタンパク質の合成をサポートする

髪の毛や皮膚、爪の主成分となるタンパク質は、複数のアミノ酸が結合して構成しています。

亜鉛が不足するとタンパク質の構造が維持できずタンパク質自体が不足するため、肌や爪、髪の毛のトラブルを招くことが考えられます。

また、亜鉛は新陳代謝を調整する酵素にも含まれており、肌のターンオーバーを促進する働きがあります。

ターンオーバーが滞ると古い細胞やメラニンが蓄積されて、シミや肌荒れの原因となる可能性があります。

髪の毛や皮膚の健康を保つためには、亜鉛不足を起こさないことが大切です。

【亜鉛の効果①】

  • 髪の毛や皮膚、爪を構成するタンパク質の構造を維持する
  • 新陳代謝を調整し肌のターンオーバーを促す

参考:橋本彩子・神戸大朋「亜鉛吸収を向上させる食品因子の探索」

1-2.免疫力の低下を抑える

亜鉛は、体内の免疫システムを正常に作用させるために必要な栄養素です。

亜鉛が不足すると、体外から侵入してきたウイルスや細菌を防御する免疫力が低下します。

実際に亜鉛の摂取量が著しく不足している発展途上国では、免疫力の低下により肺炎や感染症にかかるリスクが高くなると言われています。

そのため、亜鉛を摂取すると免疫力を維持でき、病気や感染症などの予防につながると考えられています。

【亜鉛の効果②】

  • 免疫担当細胞の分化や機能に関わっており、免疫力を高めると考えられている

参考:日本衛生学会論文「ここまで分かった亜鉛の免疫システムにおける役割 」
厚生労働省「海外の情報:亜鉛」

【こちらの記事も読まれています】
免疫力と「ユーグレナ」の密接な関係

1-3.味覚を保つ

亜鉛には食事をしたときに「おいしい」「甘い」などと感じる味覚を保つ効果があります。

人間は舌の表面にある「味蕾(みらい)」と呼ばれる器官で味を感じています。

味蕾細胞は約10日間で生まれ変わるのですが、この代謝には亜鉛が必要です。

亜鉛欠乏食でラットを飼育した実験では、味蕾細胞が減少したという結果があります。

また、味蕾細胞が減少しているラットにポラプレジンク(亜鉛補充療法に使用する亜鉛を含む薬品)を投与したところ、投与2週目から味蕾の細胞増殖が見られたとのことです。

この実験結果からも、亜鉛は味蕾の代謝と深い関係があることが分かります。

【亜鉛の効果③】

  • 味覚を司る味蕾細胞の代謝を促し、味覚を正常に維持できる

参考:ゼリア新薬工業株式会社中央研究所「亜鉛欠乏ラット舌の形態学的変化に対する亜鉛製剤ポラプレジンクの効果」

1-4.ビタミンAの合成・代謝のサポート

亜鉛は、ビタミンAの合成や代謝をサポートする役割があります。

ビタミンAには、以下のような効果が期待できます。

  • ドライアイや肌の乾燥を防ぐ
  • 胃腸の粘膜を保護する
  • 免疫機能を維持する

亜鉛は、ビタミンAを必要とする器官に届けて効果を発揮するためのサポート役を担っています。

亜鉛を摂取することでビタミンAの代謝を促し、ドライアイや肌の乾燥を防ぐ効果や胃腸の粘膜を保護する効果などが期待できます。

【亜鉛の効果④】

  • ビタミンAの合成や代謝をサポートする

1-5.生殖機能の維持

亜鉛は生殖機能の維持にも必要な栄養素で、主に下記のようなホルモンに関わっています。

ホルモン名 効果
テストステロン
(男性)
  • 男性ホルモンの一種で95%が精巣で作られている
  • 亜鉛が不足すると男性ホルモンの合成ができず、生産量が低下すると言われている
卵胞刺激ホルモン
(男性・女性)
  • 女性の場合は卵胞の発育やエストロゲンの分泌を促進し、男性の場合は精子の発生を促す
  • 亜鉛は卵胞刺激ホルモンの働きを高めると考えられている
黄体形成ホルモン
(男性・女性)
  • 女性の場合は排卵の誘発やプロゲステロンの分泌を促進し、男性の場合はテストステロンの生成を促す
  • 亜鉛は黄体形成ホルモンの働きを高めると言われている

男性ホルモンの「テストステロン」の合成や分泌には亜鉛が必要で、亜鉛が不足するとテストステロンの生産量が低下します。

男性女性問わず卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンの分泌にも亜鉛が必要となるので、亜鉛を摂取することでホルモンの働きを高めることができると考えられています。

【亜鉛の効果⑤】

  • 男性ホルモンであるテストステロンの合成や分泌を促す
  • 黄体形成ホルモンや卵胞刺激ホルモンの働きを高めると考えられている

1-6.うつ病の予防が期待できる

亜鉛を補填すると、うつ病の改善が期待できると考えられています。

実際に血清の亜鉛値が低い場合には「イライラしやすくなった」「眠れなくなった」などの意見があったそうです。

また、亜鉛を含むミネラルを摂取している人は、摂取していない人に比べて抗うつ症状が少ない傾向があるとの実験結果もあります。

精神疾患や記憶障害などと亜鉛とのつながりはまだまだ研究中ではありますが、亜鉛が疾患を改善する糸口になるかもしれません。

【亜鉛の効果⑥】

  • 興奮系の伝達物質「グルタミン酸」の分泌量を調整する作用があるため、うつ病の改善が期待できる

参考:国立国際医療研究センター「抑うつ症状とミネラル摂取との関係―断面調査の結果から―」
平澤 精一、岸村 康代 ,『長生きの切り札! 亜鉛チャージ健康法』,アスコム,2019年,P29

1-7.骨粗しょう症の予防が期待できる

亜鉛は、骨の形成や骨代謝に亜鉛が関与していると考えられています。

「骨粗鬆症と亜鉛」という論文では、骨代謝と亜鉛には密接な関係があることが示唆されています。

亜鉛を摂取すると骨代謝を促し骨のバランスを維持できるため、骨粗しょう症の予防に活用できると考えられています。

日本では50代以上の女性の3人に1人が骨粗しょう症になると言われているため、未然に防ぐために亜鉛の摂取が必要だと言えるでしょう。

【亜鉛の効果⑦】

  • 亜鉛は骨の形成や骨代謝への関与が考えられるので、骨粗しょう症の予防効果が期待できる

参考:ながさき内科・リウマチ科病院 内分泌・骨代謝科 藤山 薫「骨粗鬆症と亜鉛」

亜鉛の効果を感じるための適切な摂取量とは

亜鉛の効果が分かったところで、気になるのは亜鉛を適切に摂取する方法です。

ここでは、年代別の適切な亜鉛の摂取量と亜鉛を多く含む食材をご紹介します。

亜鉛の効果を最大限に感じるためにも、どのような食材を選択し、どれくらい摂取すればいいのか確認してみてください。

2-1.【年代別】亜鉛の摂取量

亜鉛の摂取推奨量は成人男性が10~11mg/日、成人女性が8mg/日となっています。

厚生労働省が定める年代・性別ごとの亜鉛の適切な摂取量は下記のとおりです。

男性の亜鉛の適切な摂取量(㎎/日)
年齢 推奨量 目安量
1ヶ月~5ヶ月 2
6ヶ月~11ヶ月 3
1歳~2歳 3
3歳~ 5歳 4
6歳~7歳 5
8歳~9歳 6
10歳~11歳 7
12歳~14歳 10
15歳~17歳 12
18~74歳以上 11
75歳以上 10

※目安量:推定平均必要量や推奨量を算定する科学的根拠が得られない場合の1日の摂取量

女性の亜鉛の適切な摂取量(㎎/日)
年齢 推奨量 目安量
1ヶ月~5ヶ月 2
6ヶ月~11ヶ月 3
1歳~2歳 3
3歳~ 5歳 3
6歳~7歳 4
8歳~9歳 5
10歳~11歳 6
12歳~17歳 8
18歳以上 8
妊婦の場合 +2
授乳婦の場合 +4

※目安量:推定平均必要量や推奨量を算定する科学的根拠が得られない場合の1日の摂取量

参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書」

2-2.亜鉛が多く含まれる食べ物一覧

亜鉛を効果的に摂取するには、どのような食べ物に多く含まれているのか知っておくことが大切です。

亜鉛は野菜や果物にはあまり含まれておらず、魚介類や肉類に多く含まれています

とくに、牡蠣やレバーは亜鉛が多く含まれている代表的な食材です。

亜鉛を多く含む食材ベスト3
順位 食材 可食部100g当たりの亜鉛量
1位 牡蠣(生) 14.0mg
2位 豚レバー 6.9mg
3位 牛肩肉 5.7mg

下記は、亜鉛を多く含む食材と大人1食分の目安量を一覧にしたものです。

食材 可食部100g当たりの亜鉛量 大人1食分の目安量
魚介類
牡蠣(生) 14.0mg 3粒:8.4mg(1粒20g:2.8mg)
たらこ(生) 3.1mg 25g:0.8g
うなぎ(かば焼き) 2.7mg 80g(半尾):2.2mg
ずわいがに(生) 2.6mg 100g:2.6mg
しじみ(生) 2.3mg 100g:2.3mg
えび(生) 1.4mg 50g(5尾):0.7mg
さんま(焼き) 0.9mg 150g(1尾):1.4mg
ナッツ類
カシューナッツ(フライ) 5.4mg 20g(20粒):1.1mg
アーモンド(炒り・無塩) 3.7mg 20g(20粒):0.7mg
肉類
豚レバー 6.9mg 20g:1.4mg
牛肩肉 5.7mg 70g:4.0mg
牛肩ロース 4.6mg 70g:3.2mg
牛レバー 3.8mg 20g:0.8mg
鳥レバー 3.3mg 20g:0.7mg
乳製品
1.6mg 50g(1個):0.8mg
プロセスチーズ 3.2mg 20g(1切れ):0.6mg
大豆製品
納豆 1.9mg 40g(1パック):0.8mg
木綿豆腐 0.6mg 150g(半丁):0.9mg
主食
ご飯(精米) 1.4mg 150g(茶碗1杯):2.1mg
そば(ゆで) 0.4mg 180g(一かけ):0.7mg

参考:文部科学省「食品データベース」

例えば、牡蠣は1粒当たり2.8mg相当の亜鉛が含まれています。

3粒食べると8.4mg相当の亜鉛を取れるため、成人女性1日分の適切な摂取量を満たすことができます。

しかし、牡蠣や豚レバーなど亜鉛を多く含む食材を日常的に食べることは、

  • コストがかかる
  • 献立のレパートリーが少ない

という面からハードルが高いです。

「3-2.亜鉛不足が起こりやすい3つの理由」でも詳しく解説していますが、日常的に食べる野菜や和食中心の献立は亜鉛摂取量が少なくなりがちです。

そこで、効率よく亜鉛を摂取するためには、亜鉛のサプリメントを活用することもおすすめです。

適量を守りサプリメントを飲むことで、1日に必要な亜鉛の量を補うことができます。

亜鉛が不足したときに起こりやすい症状は?

亜鉛が不足すると、髪の毛や肌、味覚などに症状が現れることがあります。

ここでは、亜鉛が不足すると起こりやすい症状をご紹介します。

併せて、亜鉛が不足に陥りやすい理由にも触れるので、亜鉛が不足していないかセルフチェックをしてみてください。

3-1.亜鉛が不足した場合の症状とは

「1.亜鉛の7つの効果」でも触れましたが、亜鉛が不足すると下記のような症状が起こることが考えられます。

亜鉛は骨や皮膚、脳や肝臓などに分布しているため、不足すると幅広い機能に影響を及ぼす可能性があります。

症状が出る部分 亜鉛が不足したときの症状
髪の毛
  • パサつきやすくなる
  • 新しい髪の毛が作られず抜け毛や薄毛が目立つようになる
  • 肌のターンオーバーが滞りシミやくすみが発生しやすくなる
  • タンパク質不足によりハリや弾力がなくなる
  • 爪に白い部分ができる
  • 爪が弱くなり縦に欠けやすくなる
  • 爪に横線が入る
粘膜
  • 粘膜の健康維持に必要なビタミンAの合成や代謝力が低下する
味覚
  • 味覚を感じなくなる
  • 味覚が鈍くなる
  • 骨量が低下し骨粗しょう症が進行する
免疫力
  • 免疫力が低下する
生殖機能
  • 男性ホルモン「テストステロン」の生産量が低下する
  • 黄体形成ホルモンや卵胞刺激ホルモンの働きが鈍くなる
精神面
  • イライラしやすくなる
  • 落ち込みやすくなる

ただし、亜鉛の摂取推奨量は、成人男性が10~11mg/日、成人女性が8mg/日と比較的少量なので、現在の日本では深刻な亜鉛不足が起こるとは考えにくいです

厚生労働省が公表している亜鉛が深刻に不足する事例としては疾患があり亜鉛の吸収、補給ができない場合や授乳により一時的に栄養不足になってしまう場合のみとなっています。

参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書」

【亜鉛が著しく不足すると疾患になる場合がある】

体内の亜鉛が著しく不足すると、亜鉛欠乏症と呼ばれる疾患になります。

亜鉛欠乏症は「3-1.亜鉛が不足した場合の症状とは」に加えて血清亜鉛値が60μg/dl未満の場合に診断されます。

先ほども触れたように現在の日本では著しく亜鉛が不足することは考えにくく、他の疾患がある場合に発症することが多いです。

体内の亜鉛が不足しているかどうかを自己判断することはできません。

気になる症状がある場合は、検査を受けることをおすすめします。

3-2.亜鉛不足が起こりやすい3つの理由

現代の日本では深刻な亜鉛不足は起こりにくいことは確かですが、軽度な亜鉛不足に陥っている人は意外と多いです。

その理由としては、次の3つが考えられます。

①和食には亜鉛を多く含む食材が少ない

亜鉛は野菜や果物にはあまり含まれていないため、和食を中心とした食事を続けると亜鉛が不足しやすくなります

とくに和食の中心となる白菜や大根などの野菜には、亜鉛はあまり含まれていません。

食材 可食部100g当たりの亜鉛量
大根 0.2mg
白菜 0.3mg
小松菜 0.2mg

栄養素は亜鉛だけでなく他にも多数あるので、栄養バランスを考えると和食がもたらす健康面でのメリットは大きいです。

そのため、亜鉛が比較的多く含まれる納豆や豆腐を使う、魚介類を献立に使用する、おやつで亜鉛を補給するなど亜鉛不足にならない工夫を取り入れるといいでしょう。

②菜食中心の食事は亜鉛が不足しやすい

レタスやキャベツなどサラダに使う野菜には、亜鉛はあまり含まれていません。

そのため、葉野菜食中心の食事にすると亜鉛が不足しやすくなります。

食材 可食部100g当たりの亜鉛量
キャベツ 0.2mg
レタス 0.2mg
トマト 0.1mg

この場合も和食の献立と同様に、亜鉛を多く含む食材を意識して組み合わせることが大切です。

例えば、サラダのトッピングにアーモンドや魚介類を使用すると、サラダをベースにした食事をしても亜鉛の摂取量を増やせます。

③アルコールの摂取量が多い

「毎晩ビールを飲む」「週末はアルコールの摂取量が多い」など、日常的にアルコールを飲む習慣がある人は亜鉛が不足しやすいです。

体内に入ったアルコールは、分解酵素により無害な物質に分解されます。

実は、分解酵素を活性化させるには、亜鉛が必要となるのです。

アルコールを多く摂取すると分解酵素の活性化に亜鉛を使わなければならないため、体内の亜鉛が不足しやすくなります。

積極的に亜鉛をとるべき人

亜鉛は健康な体を維持するために欠かせない「必須微量ミネラル」の1つです。

必須微量ミネラル
(必須ミネラルのうち1日の摂取量が100mg未満のもの)
亜鉛・鉄・銅・マンガン・ヨウ素・セレン・クロム・モリブデン

ここまでお伝えしてきたように亜鉛は骨や皮膚、脳などの機能維持に関与しているため、年齢や性別問わず誰もが適切な量を摂取する必要があります。

そのうえで、亜鉛が不足しないように心がけたほうがいいケースとしては次の3つが考えられます。

積極的に亜鉛をとるべき人は?
1 若々しい髪の毛や肌を維持したい人
2 仕事や家事をなかなか休めない人
3 妊活中の人

なぜ、亜鉛を意識的に摂取することが向いているのかチェックしてみてください。

4-1若々しい髪の毛や肌を維持したい人

皮膚と髪の毛には全身の亜鉛の約8%が存在しているため、亜鉛が不足したときに変化を感じやすいです。

一方で、継続して適切な量の亜鉛を摂取できていれば、肌のターンオーバーの最適化やコシのある髪の毛の維持が期待できます。

  • いつまでもハリのある髪の毛を維持したい
  • 抜け毛や薄毛の予防がしたい
  • 肌のハリや弾力をキープしたい

という場合には、意識して亜鉛を摂取してみるといいでしょう。

4-2.仕事や家事をなかなか休めない人

「1-2.免疫力の低下を抑える」でも解説したように、亜鉛は免疫担当細胞の機能や分化に関わっていると言われています。

つまり、適切な量の亜鉛を摂取することで、自己免疫力を高められると考えられるでしょう。

  • 仕事が忙しくてなかなか休めないから自己免疫力を維持したい
  • 子育てや家事が忙しく風邪を引かないように対策がしたい

という場合には、適切な量の亜鉛を摂取することを心がけてみてください。

ただし、免疫力を高める栄養素は亜鉛だけではありません。

ビタミンやタンパク質など他の栄養素も必要なので、バランスよく摂取することも念頭に置いておきましょう。

4-3.妊活中の人

亜鉛は「セックスミネラル」と呼ばれており、「1-5.生殖機能の維持」でも解説したように女性ホルモンや男性ホルモンと深い関係があります。

とくに男性ホルモンであるテストステロンの合成に関与しているので、不足すると精子の減少や活動量の低下を招くことが考えられます。

また、亜鉛は黄体形成ホルモンや卵胞刺激ホルモンの働きを高めるので、女性にとっては子宮の状態を整える効果も期待できます。

  • 妊娠しやすい体作りを心がけたい
  • 妊活をサポートしてくれる栄養素を積極的にとりたい

という場合にも、亜鉛が不足しないよう意識するといいでしょう。

ただし、亜鉛を摂取すれば必ず妊活の効果が得られるわけではないことは、留意してください。

亜鉛を効果的に摂取するための3つのポイント

最後に、亜鉛を効果的に摂取するための3つのポイントをご紹介します。

亜鉛を効果的に摂取するための3つのポイント
1 クエン酸や動物性タンパク質と一緒に摂取をする
2 過剰摂取を避ける
3 亜鉛の吸収を妨げる栄養素に注意する

せっかく亜鉛を摂取しても、摂取の方法を誤っていると体調不良や吸収率の低下につながる可能性があります。

亜鉛の効果を高めるためにも、ぜひ参考にしてみてください。

5-1.クエン酸や動物性タンパク質と一緒に摂取をする

亜鉛の食品からの吸収率は約30%で、年齢とともに低下すると言われています。

亜鉛の吸収率を高めるには、次の栄養素と一緒に摂取するといいでしょう。

栄養素 特徴 栄養素を多く含む代表的な食材
ビタミンC

クエン酸

クエン酸は亜鉛を包み込み吸収を助ける作用がある。

ビタミンCはクエン酸の働きを助けるので、一緒に摂取すると効果を高められる

クエン酸:柑橘系の果物

ビタミンC:ピーマン・ブロッコリーなど

動物性タンパク質 亜鉛の吸収率が向上すると言われている 肉類・チーズなど

クエン酸は亜鉛などのミネラルを包み込み、吸収を助ける作用があります。

ビタミンCはクエン酸の働きをサポートするため、亜鉛とビタミンC、クエン酸をセットで摂取するといいでしょう。

また、亜鉛は体内でタンパク質と一緒に存在する特徴があります。

そのため、動物性タンパク質と一緒に摂取すると亜鉛の吸収率が向上すると言われています。

【サプリメントの場合は小分けにして摂取する】

亜鉛のサプリメントを摂取する場合は、1日のうちで小分けにして摂取することがおすすめです。

亜鉛は吸収率が決して高くない栄養素なので、一度に多量に摂取をしても体外に排出されてしまいます。

少しでも吸収率を高めるためにも、少しずつ摂取するようにしましょう。

例えば、1日3粒のサプリメントであれば朝昼晩に分ける、1日2粒のサプリメントであれば、朝と晩に分けるなどの工夫をしてみてください。

5-2.過剰摂取を避ける

亜鉛の摂取推奨量は成人男性が10~11mg/日、成人女性が8mg/日ですが、亜鉛の1日当たりの上限摂取量は下記のように定められています。

亜鉛の上限摂取量(㎎/日)
年齢 男性 女性
18歳~29歳 40 35
30歳~64歳 45 35
65歳~74歳 40 35
75歳以上 40 30

※18歳以下は設定なし

参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書」

30代の男性は45mg/日、女性は35mg/日となっており、過剰摂取となることはまずはありません。

例えば、30代の男性が亜鉛を多く含む牡蠣を食べる場合には、16個以上食べないと過剰摂取に該当しないため想定しにくいです。

万が一、亜鉛を過剰摂取すると銅や鉄の吸収が阻害されて、貧血や銅欠乏につながる可能性があります。

また、食欲不振や吐き気、頭痛や痙攣などを引き起こすことも考えられます。

過剰摂取となる可能性としては、亜鉛のサプリメントの飲み方を誤っている場合くらいでしょう。

亜鉛のサプリメントを摂取する場合は過剰摂取とならないように、1日の適切な摂取量を守るようにしてください。

5-3.亜鉛の吸収を妨げる栄養素に注意する

亜鉛の摂取を妨げる代表的な栄養素には、フィチン酸とリン酸、カフェインがあります。

栄養素 特徴 栄養素を多く含む代表的な食材
フィチン酸 亜鉛と結合し体内吸収を妨げる可能性がある 玄米・小麦・米ぬかなど
リン酸 亜鉛の吸収を妨げる可能性がある インスタント食品などの加工食品・ソーセージ・ヨーグルト
カフェイン 亜鉛の吸収を妨げる可能性がある コーヒー・紅茶・緑茶など

玄米や小麦に含まれるフィチン酸は亜鉛などのミネラルと結合し、体内への吸収を妨げる可能性があります。

また、インスタント食品に多く含まれるリン酸も、亜鉛の吸収を妨げることがあります。

例えば、亜鉛を含む食材と玄米、ソーセージなどをセットにすると、亜鉛の吸収率が低下することが考えられます。

これらの栄養素と亜鉛を一緒に摂取してしまうと亜鉛の吸収率が低下するため、献立を検討するときには避けるようにしましょう。

また、亜鉛をサプリメントで摂取する場合は、服用している薬やサプリメントによっては飲み合わせに注意が必要です。

亜鉛の効果に関するQ&A

最後に、亜鉛の効果に関するよくある質問をまとめました。ぜひ参考にしてみてください。

6-1.亜鉛には髪の毛を伸ばす効果がありますか?

A. 亜鉛は髪の毛の主成分となるタンパク質の合成に必要な栄養素ではありますが、髪の毛を増やしたり早く伸ばしたりする効果はないと言われています。健康な髪の毛を育てる基盤を整える効果としては、期待できるでしょう。

6-2.亜鉛にニキビを治す効果はありますか?

A. 亜鉛は肌のターンオーバーを促す、自己免疫力を維持する効果が期待できるため、ニキビが早く治る可能性があります。また、肌のターンオーバーが正常化することで、ニキビや吹き出物などの肌トラブルが起こりにくくなります。

6-3.亜鉛を摂取するとどれくらいで効果を実感できますか?

A. 亜鉛を摂取する前の状況や摂取方法により効果が出るタイミングは異なるため、一概には言えません。一例として亜鉛が著しく欠乏している場合に治療薬として亜鉛を補給すると、約半数では1ヶ月以内に効果が出たと報告されています。

参考:同友会グループ「味覚障害と亜鉛」

6-4.亜鉛をたくさん摂取すると効果を高めることはできますか?

A. 亜鉛をたくさん摂取したところで、亜鉛の効果を高めることはできません。亜鉛を過剰に摂取すると、逆に体調不良につながる可能性があるため、適切な量を摂取することのほうが大切です。

まとめ

いかがでしたか?亜鉛の効果が具体的に把握でき、積極的に亜鉛を摂取するべきか判断できたかと思います。

最後にこの記事の内容を振り返ってみましょう。

〇亜鉛の効果は次の7つ
髪の毛や皮膚を健康的に保つ
免疫力の向上
味覚を保つ
ビタミンAの合成や代謝のサポート
生殖機能の維持
うつ病の予防が期待できる
骨粗しょう症の予防が期待できる

〇亜鉛はクエン酸や動物性タンパク質と一緒に摂取をすると吸収率を高められる

亜鉛の摂取推奨量は成人男性(18歳以上)が10~11mg/日、成人女性が8mg/日
亜鉛の健康な体を維持するために欠かせない「必須微量ミネラル」の1つで、誰でも適切な量を摂取する必要がある
亜鉛をより意識的に摂取するべき人は

  • 若々しい髪の毛や肌を維持したい人
  • 仕事や家事をなかなか休めない人
  • 妊活中の人

亜鉛は年齢や性別問わず、健康な体の維持に欠かせない栄養素です。

亜鉛の効果を理解したうえで、適切な量を摂取できるように食事やサプリメントを選択してみてください。

Recommend
おすすめ記事

サプリ辞典
40代女性に必要なサプリを症状別に解説。更年期指数セルフチェック付き
サプリ辞典
50代女性におすすめのサプリ。必要成分、効能について専門家が解説。
サプリ辞典
イソフラボンサプリはアグリコン型を選ぶべき。その理由を解説
女性の不調
女性が飲むべきサプリと、その摂り方を専門家が紹介